概要
システム
クトゥルフ神話TRPG(6版準拠)PL人数
秘匿2PL(KPCとのタイマンに改変可)形式
シティプレイ時間
テキストセッションで10時間~(RPにより変動)舞台
架空近未来推奨技能
<オカルト><機械修理>または<電気修理>
<図書館>
<目星>
低POW非推奨
準推奨技能
<医学><英語>
<聞き耳>
<精神分析>
<地質学>
<薬学>
自衛程度の<戦闘技能>
※シナリオクリアに支障はありません。
ロスト率
低発狂率
ほどほど備考
新規限定既知関係あり
本シナリオは神話生物、および呪文に対する独自解釈や改変が
多大に
含まれます。また、後遺症の持ち帰りやPCの根幹に大きく関わる設定が付与される場合があります。
シナリオ内表記として、人間の形を模したロボットであるヒューマノイドロボットと、
HO2を示すアンドロイドとで区別化する為、「アンドロイド」と言う名称はHO2の個体を指す場合のみ使用します。
人型ロボット全体を指す場合、ヒューマノイドロボットと呼称し、HO2はこの括りに含まれます。
公開HO
HO1 研究者
あなたは機械工学の分野で非常に著名な研究者だ。ヒューマノイドロボット開発で成功を収め、自身の作品であるHO2・アンドロイドを助手に据えて日々研究を続けている。
HO2 アンドロイド
あなたはHO1・研究者の9番目の作品で、感情知能を搭載したヒューマノイドロボットである。彼/彼女の研究を日々手伝い、身の回りの世話等も行っている。
PL向け情報
シナリオ舞台について
ロボット技術が一般的に普及しており、ヒューマノイドロボットと人間が共存する架空近未来。機械工学の発展レベルが現代にそぐわない為近未来と定義するが、他分野の発展は現代に近いものとして扱っても構わない。
国、文化等世界観に関してはKPが任意に改変できるものとする。
ヒューマノイドロボットについて
世間で市場展開されているヒューマノイドロボットは感情知能を備えておらず、人間の補佐的役割を担う。医療、製造等あらゆる分野に幅広く取り入れられており、汎用ロボットの最新機種は現在7世代目。
ヒューマノイドロボットは機体のどこかに、電源供給口を備えている。
機種によって様々だが、頭頸部、上腕等、基本的には上半身に設計されているものが多い。
ヒューマノイドロボットの所持者である人間、持ち主の事は一般的に『オーナー』と呼称する。
PC達について
PC達はヒューマノイドロボットに関する研究・開発を日々行っている。現在の課題は『感情知能搭載型第8世代』の開発であり、HO2は世間にはまだ発表していないそのプロトタイプである。
製造されたのは1年前で、研究者・助手として共にいる
期間は1年で固定。
研究・開発の内容は機体製造、論理的検証、会話・思考実験等多岐に渡る。
PC達は生活を共にしていても、別居でも構わない。
ただし、HO2は基本的に研究所(又はHO1の自宅兼研究所等)に保管されている。
研究所にはPC達以外の人間、ヒューマノイドロボットは勤めておらず、2人きりである。
PC作成について
HO1は機械工学の研究職らしい職業、HO2は補助ロボット(補助分野の設定は任意)として適切な職業を選択することが好ましい。※HO1であれば、エンジニア、コンピュータ技術者(2015)をベースにする等
※HO2が医療補助ロボットであれば、医師、看護師(2015)をベースにする等
また、適当な職業がないと感じる場合はオリジナルの職業を作成して構わないが、職業技能に設定する技能は8個以下とすること。
特徴表は使用可能。ただし本シナリオ内に於いて不適切と判断する特徴表に関してはKP裁量にて後日適用とする。
HO1、HO2ともに職業技能ポイント・趣味技能ポイントを合計したポイントで任意に割り振って良いものとする。
例えば、職業技能ポイント200 + 趣味技能ポイント130 = 合計330ポイントを自由に割り振ることができる。
HO2はファミリーネーム(姓)の設定ができない。
ファーストネーム(名)のみHO2のPLが設定できる。PL同士の同意が取れればHO1のPLに名前をつけて貰っても構わない。
詳細な年齢は設定することができない。何十代程度等までなら設定可能。
KPからある程度誘導を要する可能性有。
また、HO1のPLにはHO2の年齢設定の可否は伏せること。(公開HOでHO2はアンドロイドである為)
事前公開NPC
愛川 アコヤ(あいかわ -) HO1と同じ機械工学分野の研究者で、PC達とは既知関係にある。彼もヒューマノイドロボットの開発に携わっており、たびたびPC達の研究所に訪れては「人間の定義」について質問をする。
しかしどう返答しても納得を返してくれることはない。
Q&A
一般的に普及しているヒューマノイドロボットのクオリティはどのくらい?
一目見ただけでは生身の人間との差異がわからないほど精巧に作られています。外見上、触れた感覚等は人間と全く同じと想定して構いません。
解剖しない限り中身が内臓か機械かは判断できません。
また、動作面に於いても違和感なくスムーズに動きます。
電源供給口ってどんなもの?
電源供給口は外皮に触れるのみで作動可能な装置となっており、機体を開いたり分解する必要はありません。電磁誘導方式(ワイヤレス充電)をイメージするとわかりやすいと思います。
この機能は第7世代から実装されています。第6世代までは差込タイプの供給口でした。
なお、先述の通り電源供給口は基本的には上半身(頭頚部、上腕)に設計されています。
これはヒューマノイドロボットの頭部(人間で言うと脳)にCPUが搭載されている為です。
なお、ここで指すCPU=ヒューマノイドロボットの脳であり心臓と定義します。これがないと機体は動きません。
メンテナンスってどうするの?
第6世代以降はメンテナンスに機体の分解を要しません。外皮に電極を取り付け、コンピュータへ接続するだけの自動メンテナンスが普及しています。
致命的なエラー、明確な故障でのみ分解修理を行いますが、この場合殆どの機体は廃棄されます。
メンテナンスのイメージとしては心電図の計測を想像して頂くと分かりやすいかと思います。
KP向け情報
秘匿情報
秘匿:HO1 研究者
あなたの研究の最終目標は生身の人造人間※1を作ることである。HO2・アンドロイドが8世代目『思考知能搭載型汎用ロボット』の試作機体と言うのは建前で、
実際は人体蘇生を目的としたあなた個人の研究のプロトタイプだ。
HO2は人格等の完成度は高いものの未だ機械の身体である為、目標達成には至っていない。
あなたは過去に最も大切な人物※2を喪っており、彼/彼女と再び共に過ごしたいと考えている。
人造人間の研究を志した最大の理由は、倫理的に許されずとも彼/彼女を蘇生させる為と言うものだ。
その為、HO2を含めあなたの作品であるロボットたちは皆一様に、彼/彼女の姿を模している。
また、あなたは「人間の定義」とは「生物学でヒトに分類される物質的存在」だと考えている。
この思考は、RPに強く反映させても構わないし、最終的に辿り着く価値観が変わっても構わない。
ここで定義する人造人間とは、人間と全く同じ物理的、化学的、電気的集合体を指す。
(機械の身体ではなく、生身の人間としての人造人間)
※2:
死因の設定はPL側で可能。ただし死亡時期は当時のショックから詳細を覚えていない。
家族、恋人、親友等関係性は問わないが、HO2・アンドロイドのPLが設定した容姿等を鑑みて設定すること。
(HO2は大切な人物の容姿を模して製造している為)
PLが設定可能な情報は原則関係性のみ。ただし、簡易的なものであれば思い出等はKPと相談して設定可能。
これらの設定はKPへ必ず提出すること。
<機械修理> 【INT×3%】加算
※<機械修理>の初期値【20%】に加算する。
初期CS
INT 【1d4+14】
※必ず【15以上】となる。他ステータスとの入替不可。
秘匿:HO2 アンドロイド
あなたは生身の人間だ。しかし、あなたには感情と記憶※1が欠落しており、自分がどのように生きてきたのかを一切覚えていない。
一番古い記憶の中では既にHO1・研究者の元でヒューマノイドロボットの助手として働いていた。
HO1があなたをヒューマノイドロボットとして認識している理由はわからないが、
あなたは彼/彼女に話を合わせ、感情あるロボットの振り※2をして日々振舞っている。
そしてあなたはHO1に自分が人間であることを何故か伝えることができないのだ。
また、あなたは「人間の定義」とは「外見上人間と同一であり感情知能を持つ存在」だと考えている。
この思考は、RPに強く反映させても構わないし、最終的に辿り着く価値観が変わっても構わない。
HO1の助手として生活し始めてからのことは覚えている。それ以前の自身の記憶はない。
また、記憶喪失に伴い、意識体験がやや乏しい。意識体験とは「~と言う感じ」といった自身の体験に紐づけて物事を認知する感覚と定義する。
例えば、「イチゴのような赤」と提示されても、イチゴ自体を提示されなければ明確な情報として処理づらく、比喩表現等の認識が苦手である。
さらに噛み砕いて言うのであれば、記憶喪失以降の経験値が少なく、比喩表現と紐づけるだけの知識が少ないということ。
ただしこれらは記憶喪失による弊害なので、EDUの値と比例させる必要はない。
(初期CSの<知識>に反映されるが、職業ポイントの算出等におけるEDUには影響しない)
理解できていなくても、「認識出来ている振り」をすることは可能。
※2:
どんな人格で振舞っているかはPLが自由に設定して構わない。
ただしあくまで「振りをしている」だけであり、PC自身に感情は伴っていない。
<オカルト> 【POW×3%】加算
※<オカルト>の初期値【5%】に加算する。
<精神分析> 【EDU×1%】加算
※<精神分析>の初期値【1%】に加算する。
初期CS
POW 【1d4+14】
※必ず【15以上】となる。他ステータスとの入替不可。
SAN 【10】減算
※初期SAN(POW×5)から-10した値が最大値。
<知識> 【50%】固定
※EDUは通常通り【3d6+3】で算出。
真相・背景
本シナリオの黒幕はNPC・伊予戸ムツ(いよど -)と愛川アコヤ(あいかわ -)、登場する神話生物はイオド(MM.134p)である。HO1・研究者(以下HO1)とHO2・アンドロイド(以下HO2)は親しい間柄の人間同士※1だった。
HO1はヒューマノイドロボットの開発に成功し、その研究の第一人者として名を馳せていた。
彼/彼女のロボット技術は一般的に普及しており、ロボットと人間が共存する架空近未来が本シナリオの舞台※2となる。
なお、基本的にはロボットたちは感情知能を備えておらず、あくまで人間の補佐としての存在である。
事の発端は、イオドの狂信者・伊予戸が所持する家事補助ロボットであった愛川が、偶発的に感情知能を得たことだった。
これは作為的なものではなく、システムエラーによって発生したイレギュラーであったが、
伊予戸は「愛川のような感情を備えたロボットが人間の代替品として社会を維持すれば、よりイオドへの供物(人間)が
入手しやすい世の中になる」と歪んだ発想に至った。
そんな中、ヒューマノイドロボットと言う存在を生み出したHO1の存在を認知した愛川は、逆恨みによる復讐を企てた。
しかし、愛川自身は呪文が扱えない為、HO1の身近な人間であるHO2に接触し《イオドの招来》(KC.86p)を唱えさせたのである。
この時、イオドの存在を直視したPC達は深刻な発狂状態に陥ってしまった。
HO1は強い妄想に取りつかれ、HO2が故人であると言う認識、自分は彼/彼女を復活させる為、人造人間の完成を目指していると
思い込んでいる。
HO2は健忘症を発症し、HO1を含めたこれまでの記憶を喪失している。
伊予戸にとって愛川がHO1を襲撃させたことは誤算であり、PC達が死亡せず発狂状態に留まったことは不幸中の幸いだった。
彼はHO1の持つ技術・知識が『人間の代替品として使用するロボットを人知れず普及させる』という目的に必要だと考えており、
HO1を死なせないよう立ち回るが、HO2を失い、蘇らせたいと願うHO1の発狂症状は伊予戸には都合が良かった。
その為、伊予戸はHO1に簡易的な《石の呪い》(基.251p)を掛け、発狂症状である幻覚、妄想を固定した。
HO1の妄想の帳尻を合わせる為、HO2へは《記憶を曇らせる》(基.255p)、加えて思考力を鈍らせる為に《支配》(基.259p)を
使用している。
HO2に対する呪文は継続的に掛ける必要がある為、愛川の瞳にMPの込められた真珠(AF)を埋め込んでおり、
愛川の接触を介して呪文の効力を引きのばしている。
愛川は、その状況を利用して自分の存在を認めさせようと考える。
伊予戸の掛けた呪文により意識体験や感情の乏しくなったHO2は、
いわば「物理的化学的電気的反応は全く普通の人間と同じであるが、意識体験を持たない哲学的ゾンビ」の定義に近い存在であり、
HO1が認識しているHO2は「見た目はほど人間に近いが、中身は機械であり明確に人間とは違う行動的ゾンビ」の定義に近い存在
である。
いずれにせよ「ゾンビ※3」と認識されたHO2は人間と見做せるのか、
それとも感情を持ち、外見上殆ど人間と相違ない愛川を人間と見做してくれるのか。
愛川はPC達にその回答を迫ろうとする。
各HOの秘匿による指定で、人間としての定義が精神的・物質的に偏っているが、
最終的にどういった価値観を持つかはPLPCの思考に委ねるものとする。
HO1が設定した関係性に準拠する。ここでの「人間」と言うのは生身の人間のことを指す。
※2:
ロボットが普及している為近未来と定義する。機械工学の分野以外の文化的発展が現代に近いものとして扱っても構わない。
※3:
クリーチャーとしてのゾンビではなく、哲学で用いられる現象ゾンビと言う概念を指す。
凡そ人間に近いが、人間とは明確に違う点を持つ架空存在のこと。
NPC
愛川 アコヤ(あいかわ -) 世間的に普及している汎用ヒューマノイドロボット6世代目の個体で、偶発的なエラーにより感情知能が備わってしまった。自身がロボットと言うことは隠しており、また、生身の肉体を得て人間に成り代わりたいと考えている。
なお、人間にほど近い思考や感情を持つものの、機械であり「正気」「精神力」が存在しない愛川は呪文が扱えないため、
呪文の改良や魔術の研究は基本的に伊予戸が行っている。
瞳のパーツに特殊な真珠が使用されており、これには魔力が込められている。
愛川との接触によりHO2は伊予戸からの呪文の効果を継続的に受けている状態。
POW、正気度(SAN値)、精神力(MP)は存在しない
<クトゥルフ神話> 50%
<応急手当> 80%
<機械修理> 70%
他KPが適切と考える任意の技能
呪文は取得・使用不可
なお、HO1が自身で製作したロボットではなく、あくまでHO1の技術によって普及した汎用ロボットのひとつであり、
直接HO1と面識※はない。
対抗心のようなものを抱いている。
イオドによる一連の事件を『不審死』ではなく『通り魔』と言っているのは、原因がイオドであることを知っている為。
完全な余談として、愛川は食事を摂る等生物に近い行動の機能は一切ついていない。
名前、性格、容姿等はシナリオ側から提示しているが、下記内容が一致していればKPが任意に改変して構わない。
- POW、正気度(SAN値)、精神力(MP)が存在しない
- 耐久値(HP)は身体が機械である為、CON+SIZで算出する(生身の人間での÷2の算出はない)
- 「生身の肉体を得て人間に成り代わりたい」と言う願いを持っている
- HO1を逆恨みしており、彼/彼女に「人間だ」と認められたいと思っている
- <クトゥルフ神話>技能を【50%】取得している
- 本シナリオ外でNPC、PCとして使用しない
伊予戸ムツ(いよど -) 愛川の所有者であり、イオドの狂信者。短い黒髪に長身の男性。人間。
ヒューマノイドロボットによる社会維持により、人間をイオドへの供物として利用したいといった歪んだ思想を抱いている。
イオドと連想の付きやすい名前であるため、リアル神話技能が高いPLがいる場合、変更しても構わない。
他、性格、容姿、ステータス等も任意に改変可能。
<オカルト> 80%
<クトゥルフ神話> 60%
他KPが適切と考える任意の技能
《イオドの招来/退散》
《石の呪い》
《記憶を曇らせる》
《支配》
登場する神話生物・呪文
イオド(MM.134p) 愛川がHO2に招来させた神話生物。単眼で触手を持ち、植物、動物、鉱物を組み合わせたような半透明の肉体からは粘液を滴らせている。
イオドは狙いに定めた人間の魂(POW)を吸収し、現実世界での狩り、夢引きを行う。
POWが0になった被害者は肉体的に死亡するが、脳のみ生きている状態となり、意識は死体に残されることになる。
狩りから逃れるにはイオドのHPを0にする、防護された五芒星の中に入る、退散の呪文を使用すると言った方法を取るしかない。
<巻きひげ> 100% ※本来は80%だが、イオドの麻痺(POW30との対抗)が自動成功となる為
ダメージ 【2d10】 POW吸収
正気度喪失 【1d6/3d10】
《イオドの招来/退散》 (KC.86p) 愛川がHO2に使用させた呪文(招来)であり、野放しにされているイオドを退散させる切り札。
本シナリオの改変要素として、呪文を知っている定義は「呪文の文言を知っている/聞いた(聞かされた)」こととし、
その文言を口にすることが呪文使用のトリガーとなる。
加えて、既に招来されているイオドを術者の元へと呼び寄せるには本来のコストの半分(SAN【-5】)で発動できることとしている。
〃(呪文を知っている補助者):SAN【-10】MP【任意】
〃(呪文を知らない補助者) :SAN【-10】MP【-1】
成功率 :消費MP × 1%
五芒星形を含む特別な防護の円が必要となる。
本シナリオに於いてはPC達の居住地を囲むように位置している『五芒星の水路』が防護の円の役割を果たしている。
イオドが招来された時に円の外にいた者は即座に攻撃される。顕現中に円の外に出た場合も同様。
《石の呪い》 (基.251p) 対象の心に恐ろしい幻覚を植え付ける呪文。
本シナリオでは伊予戸がHO1に対して使用しており、効力は然程強くない。
(発狂内容の妄想・幻覚+愛川が機械工学者である刷り込み)
その為呪文を掛けられたHO1に対してはSAN値チェックは発生しない。
幻覚の内容はHO2が死亡し、現在共に居るHO2はヒューマノイドロボットであるというもの。
《記憶を曇らせる》 (基.255p) ある一定の記憶を対象が思い出せないようにする呪文。
シナリオ開始1年前時点でHO2は伊予戸によりこの呪文を掛けられ、記憶喪失となっている。
本来は対象の記憶を具体的に指定する必要があるが、本シナリオでは『イオドに遭遇し発狂するまでの記憶』に関して
呪文は効力を発揮している。
《支配》 (基.259p) 対象の意思を曲げて思い通りにさせる呪文。
シナリオ開始1年前時点でHO2は伊予戸によりこの呪文を掛けられ、ヒューマノイドロボットとして扱われることに対し
強い抵抗感を抱かないよう抑制されている。
本来は継続して掛ける必要があり都度POW対抗が発生するが、本シナリオでは愛川(の瞳に埋められたAF)を介して
伊予戸が継続的にHO2に対して対抗無く呪文を掛けている。
キーパリングについて
シナリオ本文は下記の通りで描写しています。- 2PL
- HO1とHO2の関係性は兄弟
- 機械工学の発展以外はおおよそ現代日本の文化背景準拠
- 基本的に液晶(パソコンやスマホ等電子機器の画面)は使用されず空中ディスプレイが主流
- インターホンの代わりに自動通知でポップアップが表示される等、一部現代の様式とは異なる
- PC達の職場は自宅兼研究所
なお、
タイマンの場合PLPCがHO1、KPCがHO2固定
となります。POINT 1
知識系技能に関しては
<知識>1/2~1/4
を代用しても構いません。他、適切と思しき技能で代用可能です。難易度の調整はKPに一任します。
POINT 2
NPC・愛川に対する
<心理学>
は彼は機械の身体ではあるものの、感情を持っている為通常通り処理が可能です。POINT 3
NPC・伊予戸は事前公開NPCではない為、SNS等で名前を出すことはネタバレに該当します。
伊予戸の名前を出す場合、ふせったー等で必ずワンクッションを設けるようにしてください。
POINT 4
クリアに必須の情報に関しては必ず【イベント】を発生させ、技能ロール等は原則要求しないでください。
ロールのみさせ、成否問わず情報を開示する等の措置であれば構いません。
POINT 5
適宜描写、設定等は自由に改変可能です。
ただしシナリオの根幹に関わる内容の改変は原則禁止とします。
POINT 6
生還クリア後、必ずPLへ
「出身シナリオを伏せて継続すること」
を伝えてください。これはHO2の公開HOがヒューマノイドロボットであることに対し、HO2が実際は生身の人間であるというシナリオ(秘匿)の
ネタバレを含むためです。
POINT 7
各HOPLに対する諸注意です。
HO1
キャラメイクの際、以下の4点に留意するようお伝えください。①大切な相手の性格や人格設定、氏名、死亡時期の設定は不可
思い出話は詳細に設定しすぎる場合、HO2のCSへの関与が大きくなることが想定される為、KP裁量で調節してください。
②大切な相手の死後どうやって過ごしたかは設定不可
③HO2のPLに「関係性」の開示は不可
シナリオ開始時HO1のPL認識は大切な相手≠HO2となります。
かつ、公開情報に明記されていない為上記は秘匿情報として扱い、PL同士であっても情報共有はできません。
④勤務形態については任意
世間に発表したのはHO1である」認識です。
加えて、HO1は個人の研究所を所有しており、シナリオ中利用する研究所はHO1、HO2以外の所員は出入りしません。
HO2
キャラメイクの際、必要に応じて以下2点を補足としてお伝えください。①記憶を失う以前の性格、人格の設定は任意
(HO1秘匿にてHO2の言動等は大切な相手と殆ど同じという描写があります。)
②HO1のPLから名前(ファーストネーム)をつけてもらう場合、本来の名前と異なっていても可
自身で設定していた場合、名前の違いが出てくることが想定されます。
本名は「HO2のPLが設定した名前」になります。
HO2のPLが名前を設定していない場合、HO1のPLが設定した名前をそのまま本名として扱っても、
記憶を取り戻した後~シナリオ終了後に改めて設定しても構いません。
HO1とHO2が血縁関係あるいは婚姻関係である場合、苗字はHO1と同じになりますが、
恋人や友人等であった場合はHO2のPLが苗字を任意で設定できます。
記憶を取り戻した後やそれぞれの秘匿描写で出て来る名前は適宜内容を差し替えてください。
ただし、終盤にHO2が記憶を取り戻すまで、HO2自身は本名を覚えていません。
HO1に対してのHO2の本名(大切な相手の名前)の開示はKP裁量に委ねます。
「自分がつけた呼称がHO2の本名だと思い込んでいた」としても、
セッション中秘匿で「そのまま(本名)と呼ぶのは憚られた為、あなたはHO2に(呼称)という名前を付けた」等の
描写を増やしても構いません。
本文中の記号について
シナリオ本文で使用する記号・カッコは下記を参照してください。▽ 行動宣言等
▼ 情報開示
★ アイテム・呪文等入手
< 技能 >《 呪文 》
〔 探索可能箇所・移動可能場所 〕
【 増減値 】
「NPCセリフ」
探索情報
探索によって得られる情報です。本やメモ等文字情報のあるもの、音声情報のあるもの、呪文についてのPL向け情報のみ本項に記載しています。
それ以外は下記リンクよりジャンプしてください。
1日目
愛川からの機械音博物館について
通り魔について
××××年〇月頃から、急激に不審死の報告が相次いでいる。
いずれの被害者も、疾患・外傷や毒物の反応等が一切なく、肉体は死んでいるのに脳だけが生きている状態だと言う。
警察は事件性を認めてはいないものの、引き続き捜査は行う方針とのこと。
2日目
白い石(真珠)のストラップ大真珠のディスプレイ
むかしむかし、とあるお金持ちの家でひとりの男の子がうまれました。
男の子の上には真珠を散りばめた網のようなものが広がっています。
それは親切な妖精たちが、うまれた子のお祝いにと持って来てくれた幸福の贈り物でした。
『げんきなからだ』『おいしいごちそう』『すてきなともだち』
……真珠のひとつひとつが、その子のこれからの人生を健やかで優しいものにするのです。
家を守っている神さまはにっこりと微笑んでこう言います。
「これですべての贈り物がそろいましたね」
すると、子どもを守る神さまが、いいえ、と首をふりました。
「まだひとりの妖精が、この子の贈り物を持って来ていません」
「最後の真珠が足りないのです」
子どもを守る神さまが、家を守る神さまを最後の妖精の元へと連れていきました。
そこは、町はずれにある大きなお屋敷でした。
お屋敷の中はしっとりと暗く、家の者たちはみな顔を伏せて泣いています。
たった今、この家のお母さまが天国へと旅立ってしまったのです。
しくしくとその切なげな声は部屋いっぱいに広がっておりました。
子どもを守る神さまがすっと、部屋の隅を指さします。
「あの人が最後の妖精、悲しみの妖精です」
その時、ひとしずくの涙が悲しみの妖精のひとみからこぼれおちました。
そして、涙はみるみるうちに七色にかがやく真珠へと変わるでしょう。
「この真珠は、悲しみです」
「これであの子どもの贈り物はすべてそろいました」
「人は悲しみを知ると本当の幸福がわかるようになり、自分にも他の人にも優しくしてあげられるのです」
名無しのI:また出たってよ、変死体
名無しのI:あれだろ、脳だけ生きてて死んでるってやつ。それってやっぱ意識とかあるのかな?
名無しのI:脳が生きてんなら意識はあるんじゃね?
名無しのI:だよな~俺なら絶対嫌だわ(´・ω・`)
名無しのI:最初あれだけ釣り乙とか言われてた話も、今じゃ世間を賑わす大事件だもんな
名無しのI:大事件っつーか、犯人がいるかはわからないんじゃなかったっけ
名無しのI:いや~、それがさ、どうも発見場所に規則性があるっぽいんだよ
名無しのI:〇〇市の水路ってさ、一箇所だけ五芒星になってるとこがあるだろ
名無しのI:どうもその区域の中だけは被害者が出てないらしくて
名無しのI:ソース貼ってどうぞ
名無しのI:いやオカ板でソース求めんなよ根拠厨が、そういう場所だろうよ
▒▒░は魂を狩る者。
対象の魂を喰らい、死に至らしめる。
被害者は肉体的に死亡するが、脳のみ生きている状態となり、意識は死体に残される。
『呪文の改良、狩りから逃れるには防護された五芒星へ』と走り書きがある。
※PL向け情報※
★《▒▓░の招来/退散》 コスト(呪文の使用者) :SAN【-10】MP【任意】〃(呪文を知っている補助者):SAN【-10】MP【任意】
成功率 :消費MP × 1%
発音のみで呪文の使用が可能となる。(退散の場合は逆さまに読み上げる。)
しかし現時点では呼び出す神話生物、リスクや他の必要条件等は分からない。
「呪文を発音する」と宣言した場合、上記コストが発生する為注意。
クリーチャーとしてのゾンビ以外にも、哲学で用いられる『現象ゾンビ』と言う概念がある。
凡そ人間に近いが、人間とは明確に違う点を持つ架空存在のこと。
心の哲学の分野に於いては『行動的ゾンビ』『哲学的ゾンビ』の2種類が挙げられる。
『行動的ゾンビ』とは外見上普通の人間と区別できないが、解剖すれば明確に人間との違いがわかる存在である。
『哲学的ゾンビ』とは観測可能なすべての物理状態に関して、普通の人間とまったく同一であるものの、内面的な経験を持たない存在である。
精巧なヒューマノイドロボットが前者に該当する。
後者に関しては議論の道具であり、実在を謳う哲学者はほとんどいないとされる。
『私、語り手』『9番目(のもの)、完成に程近い』という意味がある。
瞳に関連する言葉で『画竜点睛』という諺がある。
壁に描いた龍に仕上げの瞳を描き入れた途端、たちまち天に飛び立ったと言う中国の故事が由来となっており、
最後に大切な部分を付け加えて、物事を完全に仕上げるという意味。
研究所の写真
3日目
録画ファイル???『——!わかっているんですか、あと少しでHO1先生まで亡くすところだったんですよ!』
愛川 『わかっているとも、殺すつもりだったんだ』
愛川 『……けれどこれはこれで、面白い状況になったと思わないかい』
愛川 『このまま完全にHO1くんの正気が損なわれたら、ロボットの開発どころの話じゃないよ』
愛川 『ねぇ、——?協力してくれよ』
???『……脅迫のつもりですか。 ……まぁ、いいでしょう』
???『彼の技術を失うのは、私も本意ではありません』
愛川 『なんだい、それ? 石?』
???『この石を利用してHO1先生にHO2さんが亡くなったという幻覚を植え付けます』
???『要は、彼の発狂症状を人為的に悪化させ、引きのばすんです』
???『そうすれば、HO2さんを蘇らせる手段として、開発に必死にもなるでしょう』
(聞き馴染みのない言語)
???『『加えて、彼の症状に帳尻を合わせるために、HO2さんへも——……』
『MEMORY CLOUD(記憶を曇らせる)』『DOMINATE(支配)』
僕と伊予戸は共犯だ
真実を知りたければ部屋まで来てくれ
本編
導入 - 1日目
ピ、ピ、ピピ、ピ……。無機質な短い音が断続的に降る。
音に合わせて、薄青く発光した空中ディスプレイに『状態:良好』の文字が並べられていく。
計測元となっているのは、一人の男性だ。
いくつもの配線に繋がれた先で眠るように目を閉じる姿は、まるで生身の人間に思えるだろう。
しかし、彼には人間との明確な違いがあった——機械の身体であることだ。
個体名をHO2と名付けられたそれは、精巧に作り込まれたヒューマノイドロボットであり、その開発の第一人者・HO1の9番目の作品だった。
今日はHO2の定期メンテナンスの日だ。
ちなみにこの接続された機械はただのダミーであり、実際に計測等は行われていない。
電極を外皮に貼り付けて計測する心電図の機器のようなものを想定している為、分解は要さない。
HO2に「生身の人間である自分に対して何故計測システムが動作するのか」と問われた場合、
HO2のPLにのみこの情報は開示して構わない。(HO1のPLへは開示不可)
ある程度会話を重ね、満足したら次の描写へ。
一通りHO2のメンテナンスを終え、HO1が繋がれた配線を外そうとしたその時。
ピン、と軽い電子音がして、完了通知のウィンドウの横に別のポップアップが空中展開された。
『来客通知 愛川アコヤ Yes/No』
昔は玄関でインターホンを鳴らして来客を知らせたらしいが、昨今では自動通知が主流になっている。
表示された来訪者『愛川アコヤ』はHO1と同じくヒューマノイドロボット開発に力を入れている研究者仲間だ。
時折こうしてアポイントもなく訪れては雑談をして帰っていく、自由な男だった。
▽『Yes』を押す・入室許可等を口頭で答える(タッチ・音声どちらで認識するものとしても良い)
あなたが『Yes』のボタンに触れると、ポップアップは弾けるように消える。それから玄関口の方から「お邪魔するよ」と愛川の声が聞こえてくるだろう。
▽『No』を押す・入室拒否等を口頭で答える(タッチ・音声どちらで認識するものとしても良い)
あなたが『No』のボタンに触れると、ポップアップは弾けるように消えるが、一瞬も待たずして『来客通知 愛川アコヤ Yes/No』
同じ画面が表示される。
どうやら彼は入室許可が降りるまで粘るつもりらしい。
愛川 「やあやあ、お久しぶりだね。HO1くん。 いつもの質問をしに来たよ」
透き通った白髪が様々な色を複雑に反射させて、虹のようなきらきらとした輝きを零す。
白磁の肌に、不思議な虹彩の瞳、全体的に儚げな印象を殆どの者が彼に対して抱くだろう。
けれどその見た目を180度裏切るように、彼は——愛川は遠慮など全く知らないと言った様子でずかずかと部屋に入ってくる。
勧めてもいない内に愛川はどっかりと椅子に腰かけ、不遜な態度で口を開いた。
愛川 「なあ、人間と言うのは何を以て定義されると思うかい」
「物理的、化学的、電気的反応が人間と同じであれば、それは人間かな」
「それとも、感情知能を備えていれば、中身が何であれ、人間と呼べるだろうか」
HO2も勿論回答して構わないが、「機械の答えなんて聞いても意味がないね」等と意地の悪い態度を取る。
PC達に対して非好意的なNPCのRPに抵抗がある場合、「参考までに記憶しておくよ」等、多少語り口を柔らかくしても構わない。
ここでの愛川は「納得・同意しない」「博物館のチケットを渡す」という点でのみ一貫していれば自由にRP可能。
愛川の問いに答え、ある程度RPをしたら次の描写へ。
愛川 「ふぅん……。 相変わらずつまらない答えだね。こんな場所でずっと引きこもっているからじゃないか?」
「偶には外の空気でも吸って、気分転換してお行きよ」
そう言って愛川は2つのチケットをあなたたちに差し出してくる。
博物館のチケット。
記されている入場日はちょうど明日だ。
内容は宝石展で、世界各国からあらゆる宝石が集められ、今回の目玉は大真珠らしい。
★博物館のチケットを入手
愛川 「譲り受けたものなんだけれどね。 丁度僕は明日、学会に出なければならないんだ」
「なぁに、人の好意にそんな胡乱げな顔をするものじゃないよ。 要らないならば火にでもくべるといいさ」
この後は愛川と雑談しても構わないし、満足するまでRPは可能。
愛川に対して好意的な感情を持っていなければ追い出そうとしてもいい。
描写は一方的な雑談に巻き込まれた場合のものだが、愛川を居座らせる必要は特にない為省略しても構わない。
愛川はそれからいくつか近況報告の雑談を交え、あなたたちが歓迎しようがしまいがお構いなしに一方的に話し続けた。
暫くしてようやく満足したらしい彼は席を立とうとして、一瞬、顔を曇らせる。
しかし直ぐに普段の飄々とした様子に戻り、ひらひらと手を振って「それじゃあそろそろお暇するよ」と言うだろう。
▽愛川の様子をうかがう等の宣言、または
<医学><応急手当>
に成功
愛川は少し調子が体調が悪そうだが、酷く顔色が悪いわけでも、脂汗を滲ませているわけでもない。
立ち眩みのようなものだろうか、と思うだろう。
▽愛川に直接体調を尋ねる等
愛川 「少し風邪気味でね。 と言っても人にうつるようなものじゃない。安心してくれ」そう言って笑う彼の瞳には、不安が宿っているような気がした。
<聞き耳>
愛川 「ああ……そういえば。 近頃、通り魔だなんだって物騒だからね」
「出歩く時は用心することだ」
不穏な忠告を残し、愛川は去っていく。
研究所
さて、気まぐれな男も立ち去り、あなたたちは日課であるヒューマノイドロボット開発に勤しむこととなるだろう。HO1の提唱した技術で製造された、汎用ヒューマノイドロボットは既に第7世代まで市場展開している。
しかし、開発者には機体の品質向上、コスト削減、あらゆる改善が常について回るものだ。
目下の課題は『感情知能搭載機種の開発』である。
過去には倫理的に問題視された技術ではあったが、心療や介護を目的とした医療・福祉従事機種に有用性が認められ、今ではその完成を世間に期待される身だ。
——未だ公表していないものの、感情知能の搭載自体は既に成功している。
HO1の助手であるHO2こそが、そのプロトタイプとしての、9番目の作品なのだ。
運用段階には至らない為、あなたたちは日々生活を共にしながら細かな調整を行っていた。
<1d3>
内容の差し替え、増減は任意。また、予めボットの内容をPLに公開することも可能。
この質問ボットはHO1からHO2への対話の投げかけに使用するきっかけに用いるものの為、不要であれば使用しなくても構わない。
1:テセウスの船(物体を構成する全てのパーツが置き換えられた際、その物体は元のものと同一であると見做せるか)
2:トロッコ問題(誰かを助けるために他の人間を犠牲にすることは許されるか)
3:スワンプマン(故人と外見、知識、記憶等全てにおいて同一であるクローン的存在は故人と同一であると見做せるか)
簡易解説
◦ テセウスの船
例えば老朽化した船のパーツを交換していった際、全てのパーツを新しいものに交換した場合に過去の船と交換後の新しい船は
同一のものと言えるのか、といった思考実験の一種。
派生して、交換された古いパーツを元に船を組み上げた場合、どちらがテセウスの船(元の船)と言えるのかといった議題もある。
◦ トロッコ問題
「1台の暴走トロッコの先には5人の作業員がおり、このままでは全員轢き殺されてしまう」
「トロッコの暴走を知っているAさんは進路を切り替えることが可能だが、切り替えた先には1人の別の作業員がいる」
上記のような状況の時「5人を助けるために1人を殺しても良いのか」という課題。
◦ スワンプマン
「ハイキング中、落雷によって1人の男性が亡くなるが、その際に別の落雷によってすぐそばの沼から亡くなった男性と同形状の生成物が
生み出される。この生成物は男性と全く同じ外見、知識、記憶を有しており、完全なるコピー(クローン的な存在)であった。」
上記のクローン的な存在を『スワンプマン』と呼称し、亡くなった男性とスワンプマンは同一存在であると言えるかといった議題。
思考実験RPが難しい場合、またはもっと簡易的な質問をしたい場合、好きな食べ物や特技等、当たり障りのない内容に差し替えて構わない。
上記質問ボットはフレーバー的な要素である為、シナリオ進行には差し支えない。
ある程度の質疑応答のRPをしたらそれぞれへ秘匿。
その様子に、あなたは確かな満足感を得るだろう。
——あともう少し。
あともう少しで弟は返ってくる。
けれどその為に必要な肉体の器が、どうしても最大の難関だった。
<POW×3>
しかし、どこか違和感を覚える。
弟が何か嘘をついたり、誤魔化したり、そんな都合の悪い時の癖が——……出ているような気がする。
害意や敵意があるわけではない。
ただ漠然とした違和感だけが胸に広がっていく。
SANc【0/1】
失敗:
何となく、違和感を覚えるような——……気のせいだろうか。
彼が未だ完成に至っていないからかもしれない。
早く、弟を蘇らせなければ。
何とか今日も『感情を持つロボットの振り』を押し通せたはずだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
——何故、安心した、と思ったのだろう。
自分に感情はないはずなのに。
油の差し足りない機械のように、ギシリ、と。
生身の身体が軋んだような気がした。
そうしてあなたたちが会話実験を終える頃には、いつの間にか日は暮れ始めていた。
そろそろ食事の準備をしなければならない。
機械であるHO2は電源供給——所謂充電さえ週に1度行えば良いのだが、人間であるHO1には必要なものだ。
ヒューマノイドロボットに疑似的な食物摂取機能(人間の食べ物を口にしても故障しない等)が備わっていることとしても構わない。
そのあたりは細かく設定していない為、PLPCのやりたいようにRPをどうぞ。
HO2が食事をした後にHO1が摂取した食品の廃棄等事後処理をしたがる場合、下記描写。
HO2に備え付けている疑似的な食事機能は事後処理を必要としない。
人間のように栄養として吸収されるわけではないものの、定期メンテナンスでフォーマットすることが出来る。
1を0にすると言う過去には不可能とされていた技術だが、現在では当たり前のものだ。
なお、実際はHO2は生身の人間であり消化されているだけであり、この情報自体はダミー。
HO1は幻覚・妄想により『HO2が人間としての生命維持活動』をしている事実に対し、認識が上手くできない状況にある為、
架空の技術があると思い込んでいる。
夕食を終え、ふと愛川に渡された博物館のチケットの存在を思い出す。
丁度研究も行き詰って来たように感じる。
彼の言うように息抜きも必要だろうか、とあなたたちはそのチケットを手に取るだろう。
チケットには博物館の住所が記載されている。
▽地図で場所を調べる等
電子音が鳴り、半透明のウィンドウが展開された。博物館の住所を入力すれば、どうやらあなたたちの研究所からはそう遠くないということがわかる。
<目星>or<アイデア>
地図を眺めているとこの街のあちこちに配置されている水路の一部が、幾何学的な性質を持っていることに気づく。
それは五芒星の形を模しており、研究所や博物館の付近を取り囲んでいるようだ。
そしてHO1はここ1年ほどの間、HO2の性能テストに掛かりきりであり、この水路を超えて活動範囲の足を伸ばした記憶がないことも、脳裏によぎるだろう。
成功時のみ続けて
<オカルト>
五芒星というのは古くから魔除けに使用され、呪術等と関連深い図形ということを知っている。
しかし、HO1の助手を務め始めてからの記憶の中には、このようにまじまじと地図を眺めた覚えはない。
自身が忘れてしまった過去の記憶だろうか。
妙な心地で、無意識に目を背けたいという思いに駆られる。
心臓が早鐘を打つ。 じんわりと、冷や汗が背筋を伝うのを感じた。
SANc【0/1】
博物館についてネットで調べる場合
<コンピュータ>or<図書館>
別情報として<オカルト>
博物館について調べれば、来場者記念に天然石のキーホルダーを配布していると公式HPに書かれているのを見つける。
種類はランダムで、一種のくじのような娯楽として注目を浴びているらしい。
博物館の名前を検索すると、何故かオカルト掲示板がヒットする。
掲示板で騒がれているのは、一昔前の週刊誌の裏表紙によくあったと言う開運広告のような、胡散臭い話だった。
なんでも、『来場者記念のキーホルダーに不思議なパワーが込められている』そうだ。
科学的根拠も何もない話だが、なんとなく引っ掛かりを覚えるだろう。
それ以上は、調べてみても何も出てくることはない。
愛川の話していた通り魔について調べる場合
<コンピュータ>or<図書館>
特にそれらしいニュースはヒットしない。
しかし、代わりに気になる記事を見つけるだろう。
見出しは『不審死相次ぐ』というもので、約1年前から原因不明の死を遂げる者が増えているという内容だった。
××××年〇月頃から、急激に不審死の報告が相次いでいる。
いずれの被害者も、疾患・外傷や毒物の反応等が一切なく、肉体は死んでいるのに脳だけが生きている状態だと言う。
警察は事件性を認めてはいないものの、引き続き捜査は行う方針とのこと。
誰も退散の呪文を試行していない為、イオドはこの1年間野放しになっている。
PC達の活動範囲は五芒星の水路に囲まれているため襲われることはなく、また、この1年以内に五芒星の水路の外へPC達は出ていない。
明日の下調べも済んだところで、それぞれ床につく。
HO1は自室のベッドへ。 HO2は研究室の保管ケースへ。
ヒューマノイドロボットに柔らかな布団は不要ではあるものの、見た目がほど人間に近いことによるHO1の気遣いだろうか。
HO2の保管ケースには真っ白く清潔で、暖かい寝具が敷かれている。
互いに1日の終わりの挨拶を告げ、ゆっくりと微睡に誘われていく——……。
夢 - 1日目
掌をべったりと染め上げた赤色はまだ生きているかのように温かいのに、反比例して温度を失った四肢は、まるで機械だ。
金属で構築された偽物の命を彷彿とさせる、死の冷たさが弟を包む。
やめてくれ、いかないでくれと、どんなに叫んでも、彼の瞳が再び瞬いて自分の名を呼んでくれることはなかった。
その現実が受け入れられなくて、ヒューマノイドロボットの開発に力を入れ始めたのがちょうど——……どれほど前だったろうか。
10年だったような気がする。
5年だったような気もする。
1年だったような、いや、それよりももっと短いような。
いつだったのだろう。
自分が、弟の姿を重ねて『彼ら』を作り出したのは。
わからなくなる。
急に足元が覚束なくなって、何処か遠くへ沈んでいくような感覚を抱く。
落ちる、寸前、
「どうして僕のこと見てくれないの」
弟の悲痛な声が鼓膜を揺らして、
———はっと、弾けるように体を起こす。
ドクンドクンと早鐘を打つ心臓が、確かな悪夢の余韻を訴えていた。
下記の要素が含まれていれば、夢の内容は自由に改変可能。
- 大切な人物が死亡した時の回想
- いつから研究に没頭していたかわからなくなる感覚
- 目覚める直前に大切な人物に「どうして自分を見てくれないのか」といったニュアンスの投げかけをされる
誰かがあなたに語り掛ける。
振り向くと人影があり、けれども深い霧に包まれたような感覚で、はっきりとその面立ちはわからない。
その声にも聞き覚えがあるはずなのに、記憶の引き出しから見つけ出すことができない。
ぼんやりとした意識に置いて行かれるような感覚を抱く。
「———、——……って知ってる?」
構わず続けた相手の口から聞こえてきた言葉は、馴染みのない言語なのか上手く聞き取れなかった。
あなたは首を傾げ、言われたままを復唱して、
「▒▓░░░▒、▓?」
口にした、瞬間。
その言葉が危険なものだと直感的に理解する。
咄嗟に口を押えるが、音として発されてしまったそれは、取り消せない。
目の前の相手の顔は依然わからないままだと言うのに、その表情が、はっきりと、笑みを滲ませていくのがわかる。
「ありがとう、助かったよ」
純粋に礼を述べるような気楽な声色が耳に届いたのを最後に、あなたの視界は眩むような光と共にホワイトアウトしていった。
———はっと、意識が覚醒して、思わず身体を起こす。
あれは夢だ。 悪夢だと、そう言い聞かせようとして。
それでもどこかで、自身が失くした記憶の欠片だと、気づいてしまった。
1年前に愛川に急に話しかけられ、彼が口にした《イオドの招来》の呪文を復唱してしまった為に招来が成功した事故の回想。
本シナリオの改変要素として、《イオドの招来・退散》は呪文をかける意図・意識がなくとも、
呪文の言葉を口にするという行為自体がトリガーとなり、自動的に実行される。
(成功率は通常通り支払ったMP×1%)
2日目
今日は愛川に押し付けられたチケットで、博物館の宝石展を見に行く予定だ。あなたたちは身支度を終え、目的地へと向かうだろう。
1日目の夜に入手しそびれた情報(博物館について、通り魔について等)は道中に端末で検索する等の宣言があれば
再度技能ロールができる。
博物館
到着すると、平日であるからかそこまで混雑していないようだった。特に待たされるようなこともなく、すぐに受付口へ到着できるだろう。
そうしてチケットを見せれば、係員がプログラムされたような笑顔でHO2に告げる。
係員 「ご来場ありがとうございます。 記念すべきことに、御客様でちょうどぴったり来場1万名様でございます」
「おめでとうございます! 記念品としてこちらをどうぞ」
そう言って差し出してきたのは、虹色の滑らかな光沢を持つ、丸みを帯びた石のストラップだ。
★白い石のストラップを入手
《イオドの招来/退散》のMP消費に対する成功率に補正が掛かる。
このアイテムを所持した状態で呪文を使用すると、成功率が10倍となる。(1MP×10%)
1度呪文を使用した時点で上記の効力を失い、ただの真珠のストラップになる。
上記の情報はPLへは開示不可。
ただし、生還に関わるアイテムであるため、必ずイベントを発生させPCに入手させること。
HO2はHO上POWが高く設定されているため《イオドの退散》を使用する役割を担うことを想定している。
<地質学>
その石が真珠であることがわかる。
綺麗な球体になっておらず、所々形が歪な為価値が高いものではないのだろう。
石言葉には『健康・長寿』『無垢・純潔』『富・円満』『完成』等、その光沢のように様々な意味を持っていることも知っている。
『完成』であればヒューマノイドロボットの開発に勤しむあなたたちにはちょうど良いかもしれない。
<POW×1>
形容しがたい雰囲気が石から漂うのを感じる。
しかし、嫌悪感はなく、どことなく安心すると思うだろう。
受け取った記念品を掌でころころと転がしながら、あなたたちは展示会場を見て回ることにする。
探索可能箇所
〔 大真珠の展示ディスプレイ / 土産屋 〕
ただし、必要情報である真珠の情報入手が埋もれてしまう為、改変描写等で他の天然石や宝石について言及することは推奨しない。
大真珠の展示ディスプレイ
ゆっくりと巡覧していれば、今回の宝石展の目玉である大真珠の展示ディスプレイの前へと来ていたようだ。上品な紺青色の布が敷かれたその上で、大粒の真珠が美しい光沢と共に存在感を放っている。
とある信仰では天国に居る全ての人が身に纏っていると言われるのも納得するほどに神々しく、その柔らかな乳白色が優し気な光を零していく。
電子パネルには大真珠に関する歴史や、その貴重性についての説明ががずらりと並んでいた。
古来から日本でも薬として利用されていたと言う話や、酢に真珠を溶かして飲み干したという女性の逸話等、ちょっとした雑学コラムのような紹介文もある。
とある男との賭けで「一晩で贅を尽くした宴会を披露して見せる」と申し出たクレオパトラが、宴会当日に自身の耳飾りの真珠を酢に溶かし、
一口で飲み干したという逸話。
非常に貴重品である真珠を躊躇いなく使ったその様子に、相手の男はひどく驚き、彼女は無事賭けに勝利することとなった。
シナリオクリアに於いて不要な情報であり、PLの混乱を防ぐ為本編描写には含まないが、PLが知りたがるようであれば<歴史>ロール等を
要求しても構わない。
<薬学>
真珠はその希少性から薬としての効能を期待され、日本でも江戸時代には最高峰の漢方薬として重宝されていたことを知っている。
主な効能は、解熱、鎮痛、鎮静、滋養強壮等とされており、頭痛、目の病気、不眠症、口内炎等にも用いられている。
愛川が人間ではないヒントを得るためのアイテムの一つ。 勿論ただの風邪薬を購入していっても良い。
<目星>
ディスプレイの傍に、真珠にまつわる物語、逸話等の紹介チップが設置されていることに気づく。
自身の端末を翳せばチップを読み込んで、その内容を表示してくれるだろう。
むかしむかし、とあるお金持ちの家でひとりの男の子がうまれました。
男の子の上には真珠を散りばめた網のようなものが広がっています。
それは親切な妖精たちが、うまれた子のお祝いにと持って来てくれた幸福の贈り物でした。
『げんきなからだ』『おいしいごちそう』『すてきなともだち』
……真珠のひとつひとつが、その子のこれからの人生を健やかで優しいものにするのです。
家を守っている神さまはにっこりと微笑んでこう言います。
「これですべての贈り物がそろいましたね」
すると、子どもを守る神さまが、いいえ、と首をふりました。
「まだひとりの妖精が、この子の贈り物を持って来ていません」
「最後の真珠が足りないのです」
子どもを守る神さまが、家を守る神さまを最後の妖精の元へと連れていきました。
そこは、町はずれにある大きなお屋敷でした。
お屋敷の中はしっとりと暗く、家の者たちはみな顔を伏せて泣いています。
たった今、この家のお母さまが天国へと旅立ってしまったのです。
しくしくとその切なげな声は部屋いっぱいに広がっておりました。
子どもを守る神さまがすっと、部屋の隅を指さします。
「あの人が最後の妖精、悲しみの妖精です」
その時、ひとしずくの涙が悲しみの妖精のひとみからこぼれおちました。
そして、涙はみるみるうちに七色にかがやく真珠へと変わるでしょう。
「この真珠は、悲しみです」
「これであの子どもの贈り物はすべてそろいました」
「人は悲しみを知ると本当の幸福がわかるようになり、自分にも他の人にも優しくしてあげられるのです」
HO2の感情を引き戻すトリガーとして『悲しみ(涙)』が関連すると言うヒント。
エンド分岐のヒントにもなる為、目星に失敗しても時間がかかって見つけられた等の処理は可能。
土産屋
館内を周り終わった先にある土産売り場。今回の宝石展にちなんだグッズが多く揃っている印象だ。
宝石に見立てたパート・ド・フリュイ——フルーツピューレを固めたゼリー菓子のことだ——の詰め合わせや、
天然石のアクセサリー、中には真珠の漢方薬まであるようだった。
博物館のイメージキャラクターであるらしい可愛げのない羊のキーホルダーが、煌びやかな売り場の隅で寂しそうに揺れている。
あなたたちが店内を眺めていると、スタッフが人の良い笑顔で話しかけてきた。
スタッフ 「ご兄弟で博物館だなんて、仲がよろしいんですね。 素敵です」
一目見ただけでは人間と違いの判らないHO2を連れ立っているからだろうか。
特に他意もない様子でそう言われる。
▽「HO2はヒューマノイドロボットだ」等と否定を返す
あなたが否定すると、スタッフは申し訳なさそうに頭を下げた。スタッフ 「す、すみません! あまりに楽し気に笑っていたものですから……」
「最近の世代のロボットはインプットされていれば、表情パターンも豊富ですものね」
それから「どうぞゆっくりご覧くださいね」と軽く会釈して離れていくだろう。
土産屋では特にこれといった探索やイベントはない。
思い思いにRPをしてもらう場面。
自由探索 - 2日目
宝石展を一通り見終え、博物館を出れば丁度正午頃だ。このまま息抜きに2人で街を散策するのも良いかもしれない、と思うだろう。
あるいは、研究所に戻って早く開発の続きを進めよう、と気が急くだろうか。
いずれにしても、今日はまだ時間に余裕がある。
ただし研究所や自宅に戻る場合、自由RPのみとなり、特に新しい情報は落ちない為、行動可能箇所を提示することを推奨する。
下記以外でもPLPCの行動希望場所があれば自由に追加・差し替えして良い。
カフェの代わりにレストランで情報入手する等の改変も任意。最終的な入手情報が同じであれば特に制限はない。
自由探索の進行はフラグ式で、各移動先で情報入手を終えた後、イベントが発生する。
行動可能箇所
〔 カフェ / 図書館 / 公園 / (研究所) 〕
カフェ
落ち着いた雰囲気のカフェだ。ゆったりとした音楽が店内に控えめに流れており、挽きたてのコーヒーの香ばしい匂いが鼻腔を擽る。
カウンターの奥では調理用ロボットが手際よく料理を作っているが、コーヒーだけは丁寧に人の手で淹れるというのがこの店のこだわりらしい。
客足もそこそこといったところで、混雑しているわけでもなく、穏やかな時間が過ごせそうだ。
<聞き耳>
角のテーブル席を囲んだ学生たちの、ささめき合う声が耳に届く。
学生1 「また出たんだって、変死体。 体は死んでるのに、脳だけ生きてるんだって!」
学生2 「ねぇ~、やめてよ食事時にさぁ。 気分悪くなるってば」
学生1 「ごめんって。 でも最近本当増えた気がする」
「犯人がいるかっていうのすらわからなくて、警察もお手上げらしいじゃん。病気とかだったら怖いよね」
学生2 「それはそうだけどぉ……。 警察だってわからないんじゃ、うちら市民にはどうしようもないでしょ」
「とりあえずこの辺の地域じゃまだ出てないっぽいし、これ以上起きないことを祈るしかないって」
どうやらこの所話題になっている不審死事件について噂話をしているようだ。
▽学生に声を掛ける等
学生に対して<信用><説得>
等の交渉技能に成功、あるいは敵意のないRPをすれば下記のことを話してくれる。PCが交渉技能等を持っていない場合、この技能ロールはなくても構わない。(難易度調整可)
「怪我も病気もなくて、キレーな死体なんだって」
「でも被害者はみんな恐怖に引き攣った顔で発見されてて~って、オカ板とかでも話題になってるんです」
学生はそう言うと、オカルト掲示板の書き込みを見せてくる。
名無しのI:また出たってよ、変死体
名無しのI:あれだろ、脳だけ生きてて死んでるってやつ。それってやっぱ意識とかあるのかな?
名無しのI:脳が生きてんなら意識はあるんじゃね?
名無しのI:だよな~俺なら絶対嫌だわ(´・ω・`)
名無しのI:最初あれだけ釣り乙とか言われてた話も、今じゃ世間を賑わす大事件だもんな
名無しのI:大事件っつーか、犯人がいるかはわからないんじゃなかったっけ
名無しのI:いや~、それがさ、どうも発見場所に規則性があるっぽいんだよ
名無しのI:〇〇市の水路ってさ、一箇所だけ五芒星になってるとこがあるだろ
名無しのI:どうもその区域の中だけは被害者が出てないらしくて
名無しのI:ソース貼ってどうぞ
名無しのI:いやオカ板でソース求めんなよ根拠厨が、そういう場所だろうよ
「この地域(PC達の居住区域や博物館の場所)は星型(五芒星)を模した水路に囲まれている」という情報を語らせても構わない。
図書館
やや郊外に位置する、広々とした市立図書館だ。入館すると、フロアガイドの空中パネルが浮かび上がり、現在地を示してくれる。
殆どが電子書庫ではあるものの、少し奥の書架には今時珍しい紙の本も扱っているようだ。
ワード指定『真珠』+<図書館>
で同情報を開示しても構わない。<図書館>
何となく足を進めた奥の書架で、酷く保存状態の悪い——と言うよりも、使い古された形跡のある本が1冊見つかる。
取り出してみればどうやらそれはオカルトに関連した書籍のようで、非科学的な内容がまことしやかに書き連ねられていた。
掠れて読めなくなってしまった文字も多く、全貌を把握するには至らなかったが、俗に怪物と称されるような架空の存在を呼び出す
手段等が主なようだった。
ページを捲ると、その拍子にひらり、と。
本に挟まっていたらしいメモが足元に落ちる。
メモは一部が虫食いになっており、読み取ることが出来ない部分が多いようだ。
▒▒░は魂を狩る者。
対象の魂を喰らい、死に至らしめる。
被害者は肉体的に死亡するが、脳のみ生きている状態となり、意識は死体に残される。
このオカルト本は魔術書の写本だが、訳が間違っている為正しい効力はない。
挟まっていたメモは伊予戸が借りた際に別の写本から書き写したもので、《イオドの招来/退散》を習得する為のキーアイテム。
『呪文の改良、狩りから逃れるには防護された五芒星へ』と走り書きがある。
メモの最後には、何処の国の言葉かよくわからない奇妙な発音の文言が、カタカナで羅列されていた。
★《▒▓░の招来/退散》の呪文を習得
★<クトゥルフ神話> 【+1】
呪文の取得はエンド分岐に関わる為、ここで取得を漏らした場合、下記の救済措置をとること。
- 伊予戸の自宅での探索(リビングの本棚)で自動開示(技能ロールなし)
- この場で時間がかかって見つけた処理とする
本シナリオの改変要素として、発音のみで呪文の使用が可能
となる。以下、PL向けの情報として開示。
★《▒▓░の招来/退散》
コスト(呪文の使用者) :SAN【-10】MP【任意】〃(呪文を知っている補助者):SAN【-10】MP【任意】
成功率 :消費MP × 1%
発音のみで呪文の使用が可能となる。(退散の場合は逆さまに読み上げる。)
しかし現時点では呼び出す神話生物、リスクや他の必要条件等は分からない。
「呪文を発音する」と宣言した場合、上記コストが発生する為注意。
PLから質問された場合、PCとして自覚はない(確信を得られない)ことを明示すること。
『ワード指定』+<図書館>
で情報を提示して構わない。ワード指定がない場合は
<図書館>1/2
または<アイデア><図書館>の組み合わせロール
で開示しても良い。ただし
HO2、愛川、神話生物含む魔術的要素に関する情報は入手不可。
事件に巻き込まれる以前のHO2が著名人だった場合、『HO2のフルネーム』+<図書館>1/2でHO1にのみ秘匿で開示可能。
いずれにしても詳細な情報は入手不可であるため、「当たり障りのない書籍が見つかる」といった程度の処理。
愛川に関しては「情報が出てこないことが不自然だ」といった情報は出せる。
(愛川が著名な機械工学者であるというPC達の認知とずれが生じる為)
HO1について調べたい宣言があった場合は秘匿内容に触れない範囲でCSを公開することも可能。(経歴等の概要程度のみ)
以下、入手できる情報の例(シナリオクリアに影響しない、余談情報)
指定ワード『哲学』『人間』『思考実験』等
(『哲学的ゾンビ』『行動的ゾンビ』の具体的なワードが出た場合は技能なしで開示可能)
クリーチャーとしてのゾンビ以外にも、哲学で用いられる『現象ゾンビ』と言う概念がある。
凡そ人間に近いが、人間とは明確に違う点を持つ架空存在のこと。
心の哲学の分野に於いては『行動的ゾンビ』『哲学的ゾンビ』の2種類が挙げられる。
『行動的ゾンビ』とは外見上普通の人間と区別できないが、解剖すれば明確に人間との違いがわかる存在である。
『哲学的ゾンビ』とは観測可能なすべての物理状態に関して、普通の人間とまったく同一であるものの、内面的な経験を持たない存在である。
精巧なヒューマノイドロボットが前者に該当する。
後者に関しては議論の道具であり、実在を謳う哲学者はほとんどいないとされる。
指定ワード『アイ』
『私、語り手』『9番目(のもの)、完成に程近い』という意味がある。
瞳に関連する言葉で『画竜点睛』という諺がある。
壁に描いた龍に仕上げの瞳を描き入れた途端、たちまち天に飛び立ったと言う中国の故事が由来となっており、
最後に大切な部分を付け加えて、物事を完全に仕上げるという意味。
公園
バーチャルコンテンツが普及した現代でも、アナログなアスレチックが多く残っている、小さな公園だ。人間にとって運動というものは欠かせないもので、子どもが遊びを介してその習慣をつけることを目的とした公園は、
昔からその形態は殆ど変わらないらしい。
公園の周りには様々な草木が植えられており、さらにその奥に水路が流れているのが見えるだろう。
<目星>
水路の向こう岸は一部舗装されておらず、土がむき出しになっている。
よくよく目を凝らしてみると、何か大きなものを引きずったような跡がついているのがわかる。
▽水路に近づこうとする、反対に渡ろうとする等
<目星>or<ナビゲート>
視線を巡らせると、少し離れた場所に向こう岸に渡る橋があることに気づく。
向こう岸へ渡るのが妙に怖い、そう思うだろう。
警鐘を鳴らすかのように、ドクドクと心臓がうるさく響いている。
何故そんな思考が浮かんだのかはわからない。
けれどその思考に応じるように、足は地面に縫い留められたように動かない。
▽それでも近づく場合(
公園へ訪れるまでに『不審死事件』の情報を入手している場合のみ
)<アイデア>
丁度この水路を渡った先の地域は、最近世間を騒がせている不審死事件の被害が多発している地域だと気づく。
まだ明るい時間帯とは言え、もし何かしらの犯罪が横行しているのだとしたら、不用意に近づくことは危険だと思うだろう。
あるいは他の移動可能箇所を全て回っているのであれば、愛川に声を掛けられイベントが発生する。
この時点では向こう岸へ渡ることはできない。
(ここで強制的にイベント発生となる場合、「~どちらともなく口を開こうとすると、」までの描写を削る、差し替える必要がある)
イベント - 2日目
久しぶりの外出を満喫し、ふと空を見上げるといつの間にか日は傾いていた。辺り一面に射した鮮やかな朱色が、あなたたちの頬を柔らかく照らす。
西の空にはひときわ明るい光を放つ星が浮かび、段々と地平線を染めていく群青に夜が迫る気配を感じる時間だ。
帰宅か、あるいはこのまま外食で済ます提案か。
どちらともなく口を開こうとすると、重なるように背後から声がかかる。
愛川 「おや、こんな時間までデートかい? まったく君たちは兄弟のように仲が良いね」
振り返れば、飄々とした笑みを浮かべる愛川が立っていた。
その感覚は昨日もよぎったものだ。
——どこか彼が無理をしているような、隠しているような。
感情知能を備えたとは言え、そのようなことまで機械ができるのだろうか。
そんな疑問が浮かぶだろう。
<目星>
HO2の額に雫が滲んでいる。
機体に熱が籠って結露したのだろうか。
瞬間、割れるような頭痛が襲う。
ズキリ、ズキリ、ズキリ、と。
脈打つ心臓のリズムに合わせるように、痛みは段々と増していく。
いっそ意識を手放して、楽になってしまいたい。
<CON×5>
あなたはなんとか堪えきって、ぐっと足を踏みしめ直そうとする。
それでも頭痛が止むことはない。 思わず足がもつれ、しゃがみ込んでしまう。
なんとか固いコンクリートの地面にぶつかることは避けられたようだ。
▼CON 失敗:
遂に視界が明滅し始めた。
限界だ、立っていられない——あなたの身体は大きく傾いていく。
不意に彼は彼は苦しそうに顔を歪め、その場にしゃがみ込んでしまった。
▼HO2のCON 失敗:
不意に彼は苦しそうに顔を歪め——その身体が、頼りなく傾いていく。
目星に成功している場合
<DEX×5>
〃 失敗している場合
<DEX×3>
よろけたHO2の腕を、あなたは慌てて引き寄せる。
なんとかそのまま彼が固いコンクリートの地面にぶつかることは避けられた。
しかし、様子がどうにもおかしい。
荒く息を吐き、酷く苦しそうだ。
そして彼の瞳はぴったりと閉じられ、強制スリープモードになっていることがわかる。
▼DEX 失敗:
あなたは、慌てて引き寄せようとする。
しかしその指先が彼を捉えることはなかった。
そのまま傾いた体は大きな音を立てて、固いコンクリートの地面に思い切りぶつかるだろう。
HO2が<CON×5>に、HO1が<DEX×5(3)>に、両者とも失敗
していた場合はメインで以下の描写を続ける。ガツン!と硬い音と共に、HO2は地面へと倒れ込む。
HO2 HP【-1】
昨日のメンテナンスの時点では異常はなかったはずなのに、一体何故——
そんな疑問が浮かぶも、悠長に思考している場合ではなかった。
早く彼を修理しなければ、とHO1は逸る気持ちを抑えながら自身の研究所へと向かうだろう。
ここの要素はフレーバーの為、PLが過度に不安がるようであれば、厳密に処理しなくとも良い。
愛川が作為的に引き起こしたものではない為、愛川はHO2の様子がおかしいことに動揺はするものの、内容の推測はついている。
「大丈夫かい?」等と声を掛けさせても構わないが、自宅までは付いてこない。
導入の愛川来訪時の<聞き耳>に失敗していた場合、ここで再度ロールしても構わない。
研究所
バタバタと慌ただしい足音を立てて、研究所へと駆け込む。あちこちにうず高く積まれた資料の山を崩しながら、急いでHO2をメンテナンスコンピュータへ繋ぎ、システムを起動する。
HO1
<機械修理>or<電気修理>
ようやくシステムが立ち上がったかと思えば、画面いっぱいに『ERROR』の文字が広がっている。
けたたましい警告音と共に、表示は赤く赤く食いつぶされていく。
『ERROR 接続先が見つかりません』
『ERROR 接続先が見つかりません』
『ERROR 接続先が見つかりません』
『ERROR 接続先が見つかりません』
何度HO2の機体に配線を繋ぎ直してみても、ポップアップが止まることはない。
致命的な故障を引き起こしたヒューマノイドロボットは、基本的には修理することが困難だと、開発の第一人者であるあなたはよく知っていることだろう。
▼機械修理/電気修理 失敗:
焦りからか、上手くシステムを作動させることができない。
震える手は配線を取り落とし、確認画面から移行するボタンを誤って消してしまう。
自身を落ち着かせようと必死に言い聞かせてみても、思うように動かせない。
焦燥ばかりが積もっていく。
こんな不具合は今までに見た事がない。
この研究所の設備ではどうにもならないことをあなたは悟ってしまう。
じわりじわりと、絶望が胸に広がっていく。
SANc【1/1d3】
HO1が焦った表情でメンテナンスシステムを起動している様子が目に留まるだろう。
システムを介してではあなたの不調は治らないということは、自身が良く知っている。
何故ならあなたは機械ではなく——人間なのだから。
それでも、それを彼に伝えることは憚られるような気がしていた。
狼狽えるHO1に言葉を掛けられない。 そのことに酷く胸が痛むのは何故だろうか。
SANc【0/1】
そうして試行錯誤しているうちに、机の上に積まれた資料の一部にHO1の腕が、とん、とぶつかった。
今時珍しく紙にまとめられたファイルの山は、その衝撃で床へと雪崩れ落ちてしまう。
思わず視線を向ければ、そこにはあなたたちの映った写真が落ちていた。
幸せそうな笑顔で寄り添っている、1枚の写真。HO1は今より少しばかり幼い顔立ちをしている。
<目星>or<アイデア>
それは、生前の弟と撮ったものだと気づく。
弟もあなた同様、HO2より少し幼い顔立ちだ。
印字された日付を確認すれば数年前で、それは忘れもしない弟の命日だった。
——そうだ、この写真を撮った日に、彼は事故に遭って亡くなったのだ。
しかし、自分の造ったHO2が、この当時より成長した姿の弟であるのは何故だっただろうか。
成長予測AIでも利用していたのだったろうか。 思考にもやがかかったように、はっきりと思い出せない。
漠然とした不安が募る。
▼目星/アイデア失敗情報:写真
それは、生前の弟と撮ったものだと気づく。
日付を確認すれば、その日は忘れもしない弟の命日だった。
——そうだ、この写真を撮った日に、彼は事故に遭って亡くなったのだ。
あなたには、そんな写真を撮った覚えがない。 そして写真の中のあなたはHO1同様、今より少し幼い顔立ちだ。
印字された日付を確認すれば1年以上前のもので、HO1と出会っているはずがない。
けれど、あなたにははっきりと断言できるだけの記憶のピースは足りていない。
もしかして、記憶を失う前から、HO1とは交流があったのだろうか。
乏しい感情の中に、ぼんやりとした不安が募る。
そう思考しているうちに、段々と頭痛は治まっていった。
▼目星/アイデア失敗情報:写真
あなたには、そんな写真を撮った覚えはない。 そして写真の中のあなたはHO1同様、今より少し幼い顔立ちだ。
印字された日付も1年以上前のようだ。 HO1とは出会っていない時期である。
漠然とした疑問を抱き、ぼんやりと考えているうちに、頭痛は次第に治まっていったようだった。
ふと画面に視線を戻すと、いっぱいに表示されていたエラーメッセージはいつの間にか消えていた。
代わりに、
『状態:良好』
と。 青く光るポップアップが表示されている。
先程の画面は何だったのだろうか。 焦燥感による見間違いだったのだろうか。
漠然とした不安を抱えつつも、HO2には今は不調は見られない。
精密なメンテナンスは明日に行うことにして、あなたたちは各々寝床につくだろう。
なお、写真は発狂前(時期は任意)にPC達が出掛けた折に撮影したものであり、イオド招来の直前等といった設定は特にない。
この後の夢(回想)でHO1は《石の呪い》が解除される為、ここでのRPは長めに取ると良い。
(HO2に関しては、愛川のAFが壊されていない為、夢の後も解呪はされない)
PLPCが不安を訴えたり、今日中に何とかしたい等の提案があれば、「愛川が所属している研究施設は設備が整っていることを知っている」と
情報を出し、愛川に連絡を取ることが出来る。
但し「施設は今日はメンテナンス中で、明日でないと使用出来ない」と断られてしまう。
それでも引き下がる場合、状況的にすぐに壊れたりはしない等の情報を出す、愛川から問題ないと伝えさせる等して誘導すること。
愛川に電話をかけた場合は通話終了時に
<聞き耳>成功で「何かが割れる音」「誰か(伊予戸)が『愛川』と怒鳴る声」
を聞き取ることができる。この夜に愛川が伊予戸の持つ石碑を壊している為。
これ以上の行動はできない為、RPに満足したら就寝となる。
それでもどうしてもPLPCが行動を取りたがった場合、白昼夢として夢 - 2日目のイベントを発生させた後、
そのまま気を失う等の処理で強制的に2日目の行動を終了させる等の処理で適宜調整して欲しい。
夢 - 2日目
その声が耳に届くのと同時に、反射的に駆けだしていた。
脈打つ鼓動が騒がしい。本能的に、嫌な気配を感じ取る。けれど足を止めることはできない。
思考と行動が乖離しているような、そんな感覚を得る。
——これは、夢だ。
ふと、そう自覚する。
これは夢で、そしてあなたの記憶の再生だ。
忘れていたことさえ”忘れていた”、1年前のあなたの記憶だ。
止まることなく推し進めた足は、漸くHO2の元へ辿り着く。
辿り着いた先で彼は泣いていた。
嫌だ、見たくない、これは何、忘れたい。
うわ言のようにそう繰り返しては、震えて、泣いていた。
弟を宥めようと近づいて、刹那、背筋が粟立つのを感じた。
全身に迫りくる悪寒、ぶわりと冷や汗が流れ落ちて、それから、思わず顔を上げて。
目が、合った。
あなたたちを見下ろすように、一つの大きな目が覗き込んでいた。
目の持ち主は、うっすらと透ける身体から耳障りな音を立てて粘液を滴らせ、品定めするように触手を蠢かせている。
それは、植物のようであり、しかし体のあちこちから鉱物のような鈍い光を放つ石を覗かせて、それでも獣を連想させる逞しい四肢を持ち、ちぐはぐで悍ましい化け物だった。
凡そ人類の理解が及ばない、冒涜的な怪物だった。
SANc【1d3/1d10】
尚、この減少値は実際に1年前に受けた正気度喪失とは異なる。
その姿を認めた瞬間、あなたは正気を手放した。
あまりの恐ろしさに、逃げてしまいたいと、空想の世界へ逃げ込んだのだ。
こんなものは見ていない。
目の前で泣いているのはアンドロイドだ。 いや、そもそもロボットなのだから、涙など流すわけがない。
これは全部、全部全部悪い夢だ。
『だって弟はXX年前に亡くなったのだから。』
そう、思い込んだ。
泣き崩れていたのはロボットではなく、確かにあなたの弟だったのに。
あなたは逃避の為に弟が死んだという妄想を植え付けて、この1年間、生きてきていたのだ。
ずっとあなたの隣にいたHO2は、生きたあなたの弟だ。
死んでなどいなかったのだ。
この夢をトリガーに石の呪いは解除され、『HO2は自分の弟※関係性適宜であり生きていること』
『狂気状態によりずっとHO2をアンドロイドだと思い込んでいたこと』を思い出す。
正確には《石の呪い》により発狂時の幻覚、妄想を長引かされていただけだが、PLには上記のように説明して構わない。
呪いの解除は同時刻、愛川が伊予戸の石碑を壊している為。
起床後RPに即時反映可能。
にんまりと笑みを滲ませて、あなたにそう告げたのは愛川だった。
これは夢だ。 けれど、確かに失われた自分の記憶の一部だ。
それを認識すると同時に、堰を切ったように記憶の濁流が迫りくる。
そうだ、あの日、1年前。彼に呼び止められて、それから、自分は。怖い。嫌だ。思い出したくない。あんなものは見ていない。忘れてしまいたい。
割れるような感情、思考が頭をぐちゃぐちゃに搔き乱す。
混乱するあなたを置き去りに、それでも鮮明に記憶は再生されていく。
そして、思考と行動が乖離しているような感覚を得ながらも、視界の先で一際眩しく何かが輝いたことに気づくだろう。
その光を捻じ曲げて、”何か”は歪んだ空間からゆったりと姿を現してくる。
直感的に、自分が先程口にした奇妙な言語が”何か”を呼んでしまったのだということを、理解する。
——縫い留められたように動けないままのあなたを、いつの間にか一つの大きな目が覗き込んでいた。
目の持ち主は、うっすらと透ける身体から耳障りな音を立てて粘液を滴らせ、品定めするように触手を蠢かせている。
それは、植物のようであり、しかし体のあちこちから鉱物のような鈍い光を放つ石を覗かせて、それでも獣を連想させる逞しい四肢を持ち、ちぐはぐで悍ましい化け物だった。
凡そ人類の理解が及ばない、冒涜的な怪物だった。
SANc【1d3/1d10】
尚、この減少値は実際に1年前に受けた正気度喪失とは異なる。
その姿を認めた瞬間、あなたは正気を手放した。
あまりの恐ろしさに、逃げてしまいたいと、自分の記憶に蓋をしたのだ。
こんなものは見ていない。
忘れてしまおう。
これは全部、全部全部悪い夢だ。
そうして、何もない世界に逃げ込んで、必死にあなたの元へ駆けつけてきたHO1のことも忘れてしまった。
———あの人は、誰だっけ。
————自分は、誰だっけ。
HO2は明確に思い出すことができる。(呪文の効力が弱まっている為。ただし完全には解除されていない。)
また、HO1が駆けつけてきたことは覚えている為、『記憶を失う以前にもHO1と交友はあったこと』
『HO1も同じものを見て正気を損なったのではないか』という推測を立てRPに反映することは可能。
『自分が人間である』ということは起床後でも依然発言することはできない。
自宅 - 3日目
……——意識が、浮上する。ゆっくりと、瞼を持ちあげる。
全身が冷えるほどに、汗をかいていた。
あなたたちにとって、この朝はいつも通りの日常の始まりとは言い難かった。
ふいに、連続した電子音が響き、HO1の端末が着信を報せる。
発信者は『愛川アコヤ』と表示されていた。
???(伊予戸) 『どうも、おはようございます。 昨日は災難だったそうですね』
電話を取ればその相手は、あなたたちの知る愛川ではないことがわかるだろう。
発信元の端末は愛川のもののようだが、知らない男の声が挨拶を告げた。
???(伊予戸) 『HO1先生は初めましてですね。 私は愛川のオーナー、伊予戸(いよど)と申します』
『そろそろ”戻った”頃かと思いまして。 先日……と言っても1年ほど前ですが。愛川が失礼をしました』
▽伊予戸に対する質疑応答
あなたは誰?
『先程申し上げた通り、愛川のオーナーです。 しがない古物商ですよ』愛川のオーナーって?(愛川はヒューマノイドロボットなのか?)
『あれは人間のふりをしているだけの、哀れな機械です。流石HO1先生の技術と言うべきか、見た目だけは精巧でしょう』
何故愛川の端末から連絡を?
『高名なHO1先生では、見知らぬ相手の電話は取って頂けないかと思いまして。こちらも急を要していたのです。 ご容赦ください』
伊予戸 『急なご連絡で警戒されたかもしれませんが、あなた方に害意はありません。
こちらも急いでおりまして、どうかお会いできないでしょうか』
『HO1先生の技術を見込んで、頼みたいことがあるのです。 もちろん、無償でとは申しません』
『気持ちばかりですが、謝礼はご用意しております』
どうしてもPLPCが粘る場合、「愛川の不調を直してほしい」等の回答をさせても構わない。
尚、伊予戸に対して<心理学>を試みる場合、【-20%】の補正値がかかる。(電話越しの為)
初期値の場合は自動失敗とすること。
成功、失敗共に「害意・敵意がある」等、PLが過度に警戒し、伊予戸の自宅へ向かうにあたって支障が出る情報は出してはならない。
成功の場合のみ「今のところ敵意は感じないが、何か裏があるように感じる」と開示すること。
電話口でそう伝えると、彼は待ち合わせ場所に指定した住所を転送してくる。
「では、お待ちしていますね」と伊予戸は告げ、音声は切断された。
住所を確認しようと通話を終えた端末に目を遣れば、ホーム画面の中にひとつ、気になるフォルダを見つけるだろう。
これまで何となく気にせずに放っていた自宅セキュリティ用の録画ファイルが保管されているものだ。
<図書館>or<コンピュータ>
録画ファイルの中から丁度1年ほど前の日付のファイルが見つかる。
▼図書館/コンピュータ失敗情報:録画ファイル
時間をかけてとあるファイルを見つけるだろう。日付は丁度1年ほど前のものだ。
失敗の場合でも「時間をかけて見つけた」と処理し、情報は必ず開示
すること。ただし、
技能失敗は下記のギミックに影響
する。PLから具体的に「1年前のファイルを探したい」等の提案があれば、技能の成功値に【20%】の補正を与えて構わない。
映像データは破損してしまっているのか、真っ黒だ。
再生してみると、所々音声も切れてしまっているが、ある程度の会話を聞き取ることが出来る。
『——!わかっているんですか、あと少しでHO1先生まで亡くすところだったんですよ!』
誰かの名前を呼び、怒鳴る男の声が聞こえる。
『わかっているとも、殺すつもりだったんだ。 ……けれどこれはこれで、面白い状況になったと思わないかい』
対して答える男は落ち着き払っていた。
注意して聞いてみると、その声の持ち主は愛川であろうこともわかるだろう。
『このまま完全にHO1くんの正気が損なわれたら、ロボットの開発どころの話じゃないよ。 ねぇ、——?協力してくれよ』
『……脅迫のつもりですか。 ……まぁ、いいでしょう。彼の技術を失うのは、私も本意ではありません』
『なんだい、それ? 石?』
『この石を利用してHO1先生にHO2さんが亡くなったという幻覚を植え付けます。
要は、彼の発狂症状を人為的に悪化させ、引きのばすんです。
そうすれば、HO2さんを蘇らせる手段として、開発に必死にもなるでしょう』
それからブツブツと、聞き馴染みのない言語が紡がれる。
『加えて、彼の症状に帳尻を合わせるために、HO2さんへも——……』
その先は音声が完全に途切れてしまい、聞き取ることは出来なかった。
上記技能の成否判定以降、伊予戸の奇襲確率に関するギミックが発生する。
奇襲確率は100%(自動成功)からスタートし、下記行動をPLPCが行った際に、1回につき【10%】ずつ減少
する。▽伊予戸との通話後~伊予戸の自宅到着前
- 録画ファイルを見つける技能ロールで失敗した(時間を掛けて見つけた)
▽伊予戸の自宅到着後
- 伊予戸に対して<心理学>を試みる
- 伊予戸に対して<交渉技能>を試みる(嘘を指摘し口を割らせようとする等)
- 伊予戸の発言に対し、
本人に直接的に
猜疑心・不信感をあらわにした態度や返答をする
また、技能は成否問わず1回とカウントする。
この確率減少は言い換えれば伊予戸の慢心ポイントであり、
奇襲確率が高いままであればある程、伊予戸は「PC達に警戒されていない」と感じて害意を露わにする。
逆に確率が下がれば「PC達に警戒されている」と気づき、様子を窺う為手出しはしてこなくなる。
後述の愛川の修理を請けた場合、奇襲はフレーバー程度の要素であるが、
愛川の修理を断るとした際、奇襲判定に失敗すると後遺症エンドを迎える
為、確率は高いまま保った方が良い。なお、PLPCが慎重な性格であったり、容易に発言してしまうタイプの場合、難易度があがることが想定される為、
減少値はKPが任意で変更しても構わない。(下限を定める、5%ずつの減少にする等)
<アイデア>
愛川と話していた男の声は、先程着信のあった伊予戸のものであると気づく。
▼アイデア失敗情報:録画ファイルの声
愛川と話していた男の声に聞き覚えがあるような気がするが、誰かはわからない。
録音の伊予戸の声(態度)に<心理学>を振るのであれば、【-20%】の補正を掛けた上で、成功した場合のみ
「声色からして、愛川に従わされているような印象を受ける」等、伊予戸が愛川に利用されていると受け取れる内容の情報を開示する。
(実際に伊予戸はHO1の技術に利用価値を見出しており、HO1の身を案じた為)
録音に対する<心理学>は上記のギミックにはカウントされない。
伊予戸がPC達の味方側と認識させるミスリード情報だが、この段階で過剰に伊予戸に不信感を抱かせるとこの後の進行に支障が出る為、
伊予戸と対峙するまでは「(PC達に対して)少し裏はありそうだが敵意がない」と処理をする。
伊予戸の自宅
指定された住所へ向かうと、そこは街を区切るようにして流れている水路の少し先に位置する一軒家だった。表札には『伊予戸』と書かれており、今まで愛川の研究所だと思っていた場所は、電話を寄越してきた男の自宅が本来の姿のようだ。
あなたたちが到着すれば程なくして玄関から黒髪の男が顔を出す。
伊予戸 「ああ、こんにちは。 どうぞ、こちらへ」
にこやかに挨拶を述べたその男の声を聞き、彼が電話の主である伊予戸だとわかるだろう。
促されるまま、あなたたちは伊予戸の自宅へ足を踏み入れることになる。
伊予戸の自宅は五芒星の水路の外側にある。
通された先は清潔感のあるリビングだ。
伊予戸はコーヒーをもてなすと言って、あなたたちに着席を勧めてくる。
ソファが重みを受けて沈んだことを認めた後、彼はキッチンの方へと引っ込んでいってしまう。
探索可能箇所
〔 リビング 〕
リビング
シンプルなローテーブルにソファ、小さな本棚等の最低限の家具だけが備えられていた。リビングと言うよりは応接用の居室に近いかもしれない。
あまり生活感を感じない部屋だった。
<目星>
ローテーブルの下に小さな石のような破片とネジが転がっている。
ネジは愛川の損傷した部品のひとつ。
詳しく調べるのあれば、
<機械修理><電気修理><電子工学>
のいずれかの成功で、第6世代のヒューマノイドロボットのパーツであることがわかる。
本棚に
<図書館>
1冊の古びた背表紙の本を見つける。
中を開けば洋書のようで、じっくり読み解くには時間がかかりそうだ。
何度も開いた形跡のあるページには、いくつか丸印がつけられている。
<英語>
『MEMORY CLOUD(記憶を曇らせる)』『DOMINATE(支配)』と書かれている。
どうやらオカルティックな呪文のようで、人間の記憶や思考に作用する効果があるらしい。
▽本棚を調べる宣言で自動開示
本棚を調べていると、1枚のメモが足元に落ちる。酷く焦った様子で書かれており、ぱっと見ただけでは読み解くことができない。
しかし、HO1はそれが愛川の筆跡であることがわかるだろう。
彼が悪筆であることを知っているあなたは、そのメモを何とか読むことができる。
僕と伊予戸は共犯だ
真実を知りたければ部屋まで来てくれ
暫くすると、伊予戸がコーヒーを持ってリビングへと戻ってくる。
伊予戸 「ご足労頂きありがとうございます。 急に呼び出したにも関わらず、応じてくださって」
「実はその……頼みと言うのは、愛川のことでして」
ぽつりぽつりと、伊予戸は話し始めた。
伊予戸 「あれは人間ではなく、ヒューマノイドロボットです。
勿論、自認識もロボットではあるのですが、どうにも、バグが発生したらしく」
「1年少し前ですかね。 急に感情を持ったかのように、自発的な行動が活発になりまして」
「それで尋ねてみれば、自分には感情がある、と言い出したんです。
加えて、ヒューマノイドロボット開発の第一人者であるHO1先生のこともどこかから聞きつけて、逆恨みをしたようで……」
伊予戸曰く、愛川は第6世代のヒューマノイドロボットであり、偶発的なエラーによって感情知能を備えてしまった個体らしい。
感情を持つ自分が機械の身体を理由に人間として扱ってもらえないことが理不尽だと、ヒューマノイドロボットを生み出したHO1を逆恨みし、復讐を企てたことから1年前の事件が起こったのだと言う。
愛川が用いたオカルティックな手段の入手経路等は伊予戸は知らないらしく、時間が解決するのを待っていたのだと謝罪を述べた。
伊予戸 「愛川から、感情知能を取り除く修理をして頂けないでしょうか。 またあのように暴走されては、手に負いかねます」
伊予戸は、頭を下げてHO1へ頼み込む。
彼の依頼と言うのは、『愛川の感情知能を取り除く修理』というものだった。
以降伊予戸との会話では先述の 奇襲確率ギミック が発生する
為留意すること。<交渉技能>
の宣言は基本的に想定していないが、伊予戸の嘘を見抜き、情報を引き出すために振ろうとするのであれば試行回数とカウントする。原則、PLから宣言がない限り<心理学><交渉技能>が振れることは伏せること。
伊予戸に対して
<心理学>
を試みるのであれば、下記例の具体的なワード指定が必要になる。「入手経路を知らない」というのは本当か等
→ 嘘。実際は伊予戸はイオドの狂信者であり、彼の自室には魔術書の類が大量にある。
直接伊予戸が唆したわけではないが、愛川はそれらの魔術書を利用して《イオドの招来》に臨んだ。
なお、録音データの声が伊予戸だとわかっている場合、伊予戸がオカルトに明るいことは技能を振らずともわかって良い。
「時間が解決するのを待っていた」は本当か等
→ 「(発狂状態は)時間が解決する」に嘘はないが、「PC達に対して呪文を掛けている(いた)こと」を隠そうとしている。
クリティカルでのみ「HO1に対し敵意はなさそうだが、時折HO2に対して害意が見え隠れしている気がする」等の開示が可能。
▽伊予戸に対する質疑応答①
下記質問例は奇襲確率ギミックにカウントされる。
入手経路を知らないのは本当?
「私はオカルトには疎くて……。お力になれず、申し訳ありません」時間が解決するとは?
「精神的に衰弱した状態から、すぐに回復するのは難しいでしょう?そのままの意図で申し上げたんですが…気に障りましたでしょうか?」
詳しく尋ねようとするのであれば、医者に症例を説明して1年程度で回復するだろうと言われた等で話を合わせること。
ただし発言・状況から神話的事象に触れたことによる発狂に対して心当たりがあることは気づけて構わない。
この時間にはPC達へ掛けた呪文の解除(時限はない)は含まれていない。
1年前の現場にいた?(会ったことある?)
「いえ、後日愛川を問い質して状況を知りました。見ず知らずの人間が急に訪ねて行って、悪戯に刺激するのも良くないと思いまして」
「症状が落ち着いてお話しできる機会をずっと待っていました。お会いするのは初めてです」としか言わない。
<心理学>で嘘だと分かる。
真珠について知っている?
「真珠……と言うと、宝石の真珠の事でしょうか? 生憎、装飾品には明るくないものでして……」なお、「記憶や感情を閉じ込める」等の具体的なワードを含めない限りは上記のようにとぼける。
ワードを提示した上で尋ねても、「そんな不思議な真珠があるんですね」等とはぐらかす。
▽伊予戸に対する質疑応答②
ただし
リビング探索情報の質問回答に<心理学>を振った場合はギミックにカウント
される為注意すること。その他の質問は適宜調節して欲しい。
HO1のことを何故知っているの?
「ロボット工学第一人者のHO1先生を知らない人なんていませんよ。愛川がご迷惑をお掛けしたこともあって、一方的にですが存じておりました。
直ぐに謝罪に伺えず、申し訳ありません」
何故愛川を修理してほしいのか?
「あれは私にはもう手に負えません。機能が便利で重宝していたのですが、最早ロボットとは言いづらく……手のかかる子供を抱えた気分です」
愛川を修理しないと言ったらどうする?
「それは……残念ではありますが、廃棄処分するつもりです」リビングの石の破片やネジは何?
「さあ……?愛川のものでしょうか。 昨日帰宅した時に損傷していたようで」実際は昨晩二人が争って伊予戸が愛川を殴り、愛川が石碑を壊した際に落ちた破片。
古い本に書かれていた呪文について知っている?(《記憶を曇らせる》《支配》について)
「恐らく愛川の私物かと……。そんな本があったんですね、知りませんでした」これらの呪文は伊予戸がHO2に掛けている上、本は伊予戸のもの。
エンド分岐
断る場合、伊予戸の奇襲判定次第で重篤な後遺症を持ち帰ることとなる為、この選択肢がエンド分岐に差し掛かることを
KPはPLへ提示して構わない。
請ける場合下記描写へ続く。断る場合 愛川の修理を断るへ。
なお、修理はしないが愛川に会いに行く等の行動宣言があった場合には修理を請ける分岐へ進む。
愛川の修理を請ける(又は愛川に会いに行く)
愛川の修理を受け入れれば、伊予戸は奥の部屋へとあなたたちを案内する。部屋は薄暗く、ライトブルーの空中ディスプレイだけが仄かに辺りを照らしていた。
照らされた先で、1人、ゆっくり振り返る影がある。
愛川 「……直せって言われたのかい。 まったく人間って、傲慢だよね」
憎しみを込めた目でこちらを睨みつけるのは愛川だった。
首元に繋がれた電源供給コードから、ジ、ジ、と小さく音が鳴っている。
彼が人間ではなく、ヒューマノイドロボットであることの証明の音だった。
あなたたちが今まで同じ研究者仲間だと思っていた、いや、思い込んでいた彼は、人間ではなかったのだ。
SANc【1/1d4】
愛川は自分の置かれた状況を理解している口ぶりだったが、それでも普段通りの横柄な態度であなたに語り掛けてくる。
愛川 「いつもの問答をしようか、HO1くん」
「人間と言うのは何を以て定義されると思うかい」
「物理的、化学的、電気的反応が人間と同じであれば、それは人間かな」
「それとも、感情知能を備えていれば、中身が何であれ、人間と呼べるだろうか」
▽生物学的な人間と答える
愛川 「……それなら僕は、君の定義では人間ではないと言うことになるのかな」「感情も記憶も損なったHO2は人間と定義されるのに、どうして機械の身体だからって僕は人間じゃないんだ?」
「あんまりじゃないか。 こんなに苦しくて悲しいのに、バグの一声でスクラップだ。僕がロボットだから」
「認めてくれ、HO1くん。 僕を人間だって言ってくれ」
▽感情知能を備えていれば人間だと答える
愛川 「………それなら僕は、君の定義では人間と言うことになるのかな」「そうしたら、感情も記憶も損なったHO2は人間ではないよね。 なのに何故彼は人間として権利を得てるんだい?」
「ずっと聞きたかったんだ。ずっと認めて欲しかった……君に」
「……なあ、僕は人間か?」
▽押し黙る、上記以外の回答をする
愛川 「……今まではこの機械の身体を隠していたから、聞けなかったけれど」「僕はずっと君に認めて欲しかった、人間だって」
愛川 「利便性の産物で、ヒューマノイドロボットだなんて生み出されて本当に迷惑だよ」
「その所為で僕はいつまで経っても人間扱いされない。 ずっと『お手伝いロボット』のままだ」
「だからこの技術を開発したHO1くんを恨んだよ、同じ目に遭わせてやろうって思った。
あの化け物を使って生きながら死んでもらうつもりだったんだ。
……失敗したけれどね」
「失敗したけれど、運よく君と問答するのに丁度いい状況が出来上がってくれた」
愛川はいつになく饒舌に語り続ける。
愛川 「哲学に於ける『ゾンビ』って知ってるかい?
外見上普通の人間と区別できず、解剖して初めて”人間じゃない”とわかる『行動的ゾンビ』。
観測可能なすべての物理状態に於いて人間と全く同一でありながら、意識体験を持たない『哲学的ゾンビ』。
……僕と、HO2くん。 ゾンビの定義が出来上がったんだ」
「君の大切な大切なHO2くんの”人間”を否定して、それでも君が僕を”人間”だと選んでくれたら、
きっと僕が本物になれるって思ったんだ。
それで何度も尋ねに行ったのさ」
そうして、まるで人間と変わらない表情で愛川は諦めたように笑うだろう。
愛川 「でも、結局全部無駄だった。所詮はバグなんだ、この感情は」
「もうパーツが悲鳴を上げてるよ。 正真正銘、スクラップさ。直すまでもない」
あなたたちが愛川に近づこうとした瞬間、後ろで何かが動く気配がした。
同時に、HO2の腕を勢いよく愛川が引く。
状況を飲み込む間もないまま、固い金属の音が
バキン!
と、部屋に響き渡る。
思わず音の方向に目を向ければ、千切れかけた配線で頼りなく繋がった愛川の腕があった。
そのまま視線は損傷の原因を辿る。
伊予戸 「邪魔をしないでください、愛川」
辿った先には、先程までの柔和な笑みを消し去り、歪んだ表情を張り付けた伊予戸が、スパナを握りしめていた。
- 愛川の暴露
愛川 「ここまでイカれてしまったら、直すも壊すも抵抗はしないけれど。 巻き込んだからには、ひとつ伝えておくことがある」
そしてゆっくりと、人差し指を伊予戸に向けるだろう。
愛川 「君たちの状況を利用したのは僕と、もう一人。 …………そこに居る、僕のオーナー、伊予戸だよ」
指さされた伊予戸は苦々し気な表情を湛えると、愛川を一瞥し黙り込む。
愛川 「HO1くんの妄想を引き延ばし、その内容に帳尻を合わせるために、こいつは君たちの症状にひと手間加えたのさ。
HO1くんにはHO2くんが死亡したという幻覚を植え付けて、HO2くんはその妄想に疑問を抱かないように。
彼の記憶を奪って、思考を支配した。」
「非科学的だと思うだろう。 けれどね、彼は人知の及ばないオカルトに陶酔した狂信者だ。どうとでもしてくれたよ」
「最も、最初にそれを強いたのは僕だけれど。 段々こいつの利害も一致していったんだ」
愛川 「大切なHO2くんを蘇らせるために、HO1くんは必死に研究にのめり込んだだろう。
伊予戸は、君が完成させようとしていたその『感情知能搭載型第8世代』を人類に挿げ変えようと目論んでいたんだよ。
だから君を——正しくは君の頭脳と技術を、失う訳にいかなかったし、研究に必死になったのは都合が良かった」
「どうも、『神』の捧げものとして間引いた人間のクローン代わりに、その第8世代を利用するつもりだったらしいよ」
愛川 「だからもう一度なりふり構わず必死になってもらう為に、呼び出したこの場でHO2くんを今度は本当に殺そうとしてたみたいだね」
「……まったく人間ってのは、悍ましいことを考えるものだよ」
赤裸々に語りきって、愛川は緩く笑んで見せた。
伊予戸に視線を向けると、存外に落ち着いた様子でただじっと黙っていた。
何故?本当?等と伊予戸に問い詰めたり語り掛ける場合は下記に続く。
伊予戸 「もし精巧で、感情知能を持ったヒューマノイドロボットが人間に挿げ変わったところで、誰も気付けやしません。
あれが巧く溶け込んだように、人類の代替が利くようになるんです」
伊予戸の歪んだ笑みは、段々と恍惚とした陶酔を孕んでいく。
伊予戸 「人間も、ロボットも、さして違いはありませんよ。
私にとって違いがあるとすれば、神に捧げる供物になれるか、なれないかの差です」
「あなたたちも私の信奉する神を見ればその崇高さが理解できる。
自らその身を捧げたいとすら思えるでしょう」
そうして、彼は不可思議な言語を紡ぎ始める。
- 狂信者・伊予戸との戦闘
開始前にシークレットで
<1d3>
を振る。出た出目のラウンド数経過で伊予戸の《イオドの招来》が発動する。
伊予戸の呪文が発動した場合は魂を狩る者・イオドとの戦闘の処理を参照すること。(戦闘後の分岐は愛川から真珠を差し出される流れとなる)
上記R以内にPC達は《イオドの退散》を宣言、成功させる必要がある。
伊予戸は戦闘中呪文に専念し、攻撃・回避は行わない。
愛川の戦闘参加は想定していないが、PC達を庇う行動等はとらせることは可能。
あるいは愛川に
<クトゥルフ神話>
を振らせ、白い石のストラップで呪文の成功率が上がる旨を開示させても構わない。※勝利条件※
①《イオドの退散》を成功させる(博物館で得た白い石のストラップを所持している場合、成功率の補正が10倍になる ※1MP×10%)
②伊予戸のHPを0にする(非推奨)
逃走は不可。
なお、この後の愛川の発言で気付けなかった場合、
<オカルト>または<クトゥルフ神話>
で《イオドの退散》が有効な手段であると気づくことができるが、ラウンドを消費する。愛川 「こいつの言う『神』とやらは、1年前からずっとこの街を徘徊しているよ」
「既に呼び出されているものを、ここに引き寄せるだけしかこいつにはもう精神力は残ってない」
本シナリオの改変要素として、術者の元へ招来済みのイオドを呼び出すには本来の半分のコストで発動が可能としている。
愛川 「なんで助言するのかって、不思議そうな顔だね。
酷いな、HO1くんに掛けられた呪いの石碑を壊したのも僕なのに」
愛川は自嘲したように笑う。
愛川 「発つ鳥が後を濁すのは好きじゃないんだ、それだけさ」
①《イオドの退散》を宣言後成功する
訳も分からぬまま、縋るように呪文を唱える。あの日、HO2が口に出してしまった言葉の羅列とは、逆向きに。
ふと、博物館で記念品として貰ったストラップが淡く発光したような気がするだろう。
あなた達が唱えた呪文を聞いた伊予戸は、段々とその顔を真っ青に染めていく。
伊予戸 「なんてことだ! 神を、神を退散させる等!!あってはならないことだ!!」
その悲鳴にはもう殆ど正気は残されていないように思う。
けれどその切実さから、彼の言う『神』の脅威は無事に除かれたことを悟るだろう。
取り乱した彼はぐらりと膝をつき、もはや言語として成立していない何かをひたすらにぶつぶつと呟いていた。
② 伊予戸のHPを0(または気絶状態)にした
伊予戸はぐらりと膝をつき、そしてそのまま地に伏すだろう。その様子を愛川は冷たく一瞥し、あなたたちに「それで。 元凶は取り除かなくていいのかい?」と促してくる。
なお、①②いずれにしても伊予戸は正気度を全て喪失し、永久的発狂に陥る為、今後危害を加えてくることはない。
(HP0の場合瀕死と扱って構わない。)
HO2のPOWはHO上高く設定されており、MPコストを10以上とすれば自動成功となる。
(白い石のストラップ所持の場合)
基本的に成功することを想定している。全て失敗した場合、ハウスルールの代替措置等で成功させて構わない。
愛川 「最後の真珠はここだよ」
愛川はそう言って、自身の右目をゆっくりと抉り取る。
バチ、バチ、と静電気の弾けるような音がして、その瞳を繋ぐ配線が千切れていく。
そうして取り出された瞳の中には、真っ白な石がひとつ、埋め込まれていた。
愛川 「HO2くんの記憶障害や思考の低下を引きのばしていたのはこの石だ。
呪文を掛けた本人はこの様だし、もうじきに戻るはずだよ」
ゆっくりと、あなたたちにその石を手渡してくる。
愛川から石(真珠)を手渡されたら、最後の真珠へ。
愛川の修理を断る
修理を断る旨を告げれば、伊予戸は残念そうに眉を下げた。伊予戸 「そうですか……。 残念ですが、愛川は破棄することにします」
「この度は、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
それから玄関まで案内され、すんなりと帰してくれると感じるだろう。
伊予戸に別れを告げ、背を向ける。
そこで、ふいに、
ガツン!
と鈍い音が響いた。
<DEX×5>
殴られた、と、思考が追い付く頃にはあなたの体は大きく前方へ傾いていった。
HP【-1d3】
そのまま地面へぶつかる、と思った矢先。
くん、と腕を引っ張られる感覚があった。
思わずそちらを見れば、HO1が慌てた表情であなたを抱き留めたようだった。
▼HO1のDEX 失敗:
強い衝撃と共に、あなたは地面に倒れ込む。
HP【-1】
弾かれたように振り返った先には、先程までの柔和な笑みを消し去り、歪んだ表情でこちらを見つめる伊予戸が立っていた。
伊予戸 「本当に死んでしまえば、本気になれますか?HO1先生。
必死だったでしょう。正気を失って、彼がロボットだと信じていた頃、必死に技術を生み出そうとしたでしょう?」
「私は、その技術を一刻も早く普及させてほしい!
そうすれば、人間がヒューマノイドロボットに挿げ変わったところで、誰も気付けやしない!
あれが巧く溶け込んだように、人類の代替が利くようになるんです!」
その歪んだ笑みは、段々と恍惚とした陶酔を孕んでいく。
伊予戸 「ならば、もう一度捧げ直しましょう」
「そして必死に開発に励んでください、HO1先生」
そして伊予戸は奇妙な言語を口にした。
聞き馴染みもなく不協和音にも似た単語の羅列だったが、耳にした瞬間背筋が凍るような心地を覚える。
本能的に、それが触れてはならないものだと、あなたたちは理解するだろう。
続いて、太陽の輪郭を模したような、一際強い光が網膜を刺激する。
その光は空間を捻じ曲げ、やがて1体の悍ましい化け物をその場に呼び出す。
——じい、と、目が合う。
獲物に向けるようなその視線には、覚えがあった。
1年前、あなたたちの日常を歪めた、あの時の視線だ。
半透明の身体から粘着質な水音を反響させ、蠢く触手が伸びる。
植物のような、鉱物とも言えるような、しかし獣とも形容出来そうな、そんな理解の及ばない冒涜的な身体を持つ怪物。
早鐘を打つ鼓動が、全身に危険だと訴えていた。
SANc【1d6/3d10】
これにより発狂に陥った場合、狂気の内容はフェティッシュ(HO1/HO2に対する異常執着)で固定する。
伊予戸 「ああ、私の神よ! どうか、どうか供物をお受け取り下さい……!」
伊予戸はうっとりとした表情で化け物に語り掛けている。
状況から察するに、あなたたちを生贄として捧げるつもりらしいとわかる。
が、しかし。
彼が神と崇めたその化け物が、ゆっくりとその触手を伸ばして掴み取ったのは、伊予戸だった。
絡めとられた彼の身体は段々と生気を失っていく。 黒い瞳が次第に濁っていく。
あなたたちはただ呆然と立ち尽くすほかない。
このままでは、次に獲物として狙われるのは——あなたたちだ。
- 魂を狩る者・イオドとの戦闘
開始前にシークレットで
<1d2>
を振る。出た出目のラウンド数、イオドは伊予戸の捕食(吸魂)のみに専念し、PC達へ攻撃は行わず、回避もしない。
※勝利条件※
①《イオドの退散》を成功させる(博物館で得た白い石のストラップを所持している場合、成功率の補正が10倍になる ※1MP×10%)
②イオドのHPを0にする(非推奨)
逃走は不可。
イオドのステータスはKP向け情報:登場する神話生物・呪文を参照。(MM.134p)
なお、
<オカルト>または<クトゥルフ神話>
で《イオドの退散》が有効な手段であると気づくことができるが、ラウンドを消費する。戦闘開始前にPCが2人とも発狂に陥って居た場合でも、呪文の宣言はできることとして構わない。
原則想定していないが、万一PCのHP・SAN・POWいずれかが0になった場合エンド『藍』へ。
①《イオドの退散》を宣言後成功する
訳も分からぬまま、縋るように呪文を唱える。あの日、HO2が口に出してしまった言葉の羅列とは、逆向きに。
ふと、博物館で記念品として貰ったストラップが淡く発光したような気がするだろう。
しかしそんなことに気を配る余裕はなく、あなたたちは目の前の脅威が立ち去ることを必死に祈った。
化け物の触手があなたたちに触れようとした、寸前。
霧散するようにその輪郭は溶けていった。
全身に迫りくるような威圧感もなくなり、安堵から思わず身体の力が抜けてしまうかもしれない。
その感覚が、脅威が無事除かれたことを伝えてくれた。
② イオドのHPを0にした
ぐらりとその巨躯が揺れ、地面に伏す。それから直ぐに輪郭は霧散していき、消えてしまうだろう。
全身に迫りくるような威圧感もなくなり、安堵から思わず身体の力が抜けてしまうかもしれない。
その感覚が、脅威が無事除かれたことを伝えてくれた。
このルートでは既に伊予戸は愛川の瞳からAFである真珠を取り出している処理となる。
以下の描写で手に入る真珠はHO2に対する《記憶を曇らせる》《支配》の継続に使用されていたもの。
緊張が解け、落ち着きも取り戻した頃、床の隅で何か小さく光るものが目に留まる。
近づいて拾ってみれば、蓋をされた透明な瓶の中に、粒のようなものが入っているようだ。
それは真珠に似た光沢を放つ、白く丸い石だった。
最後の真珠へ。
- 最後の真珠
その石に、手を伸ばす。指先で摘まめる程度の小さなそれを、あなたたちは、静かに、
砕く。
本物ではないだろうか。
酷く、愛しく、切なく、そしてどうしようもなく悲しかった。
溶けだすように、あなたの瞳からは涙があふれて止まらなくなる。
それが、忘れ切っていたあなた自身の感情だと、次第に理解する。
この真珠はあなたの『最後の真珠』だ。
続いて、ぶわりとむせ返るような記憶の奔流がやってくる。
記憶の中にはいつもHO1がいる。隣で笑い、怒り、泣いて、そして慈しむようにあなたを見る。
あなたも応えて微笑みを彼に返すだろう。
それらは、在りし日のあなたたち兄弟の記憶だった。
あなたが傍でずっと支えてきたHO1は、唯一の、大切な兄だった。
それを、やっと、思い出す。
この涙は悲しみだ。
兄を忘却していたことが悲しくて、虚しかったのだ。
不意に、隣のHO2が突然ほろほろと涙を零し始める。
大粒の真珠のような涙が、その両目からとめどなく流れていく。
真珠は伊予戸がHO2に対して《記憶を曇らせる》《支配》を継続させるために使用していたもので、術者の永久的発狂(もしくは死亡)に加え、
AFを壊したことによって解呪された。
なお、KPはHO2へ秘匿でHO1が設定したHO1とHO2の関係性を補足として開示すること。
描写に含んでおいても構わない。
RPに満足したらエンドへ移る。
愛川の修理を請けた → エンド『Eye』へ
愛川の修理を断り、イオドを退散させた → エンド『愛』へ
エンド:Eye
愛川の修理を請けると答えた、または愛川に会いに行くと答えた。
愛川 「ヒューマノイドロボットなんて生み出してさ、君のことは未だに憎いけれど」
愛川はHO1に向き直って口を開く。
愛川 「感情なんてものがあるせいで、僕は結局罪悪感にも苛まれることになった。
本当に、難儀なものだよ」
「僕も……それを『悲しい』、と。 泣いてみたかったな」
そうして静かに笑って、愛川はその場に崩れ落ちた。
ガシャン、と無機質に響いたその音が、彼の最期を告げていた。
死期を——自身の致命的な故障を悟ったヒューマノイドロボットは、罪滅ぼしでもしたかったのだろうか。
物言わぬ機械の身体は、もうその真実を語ることはない。
<機械修理><電気修理>
を試みる場合、愛川は起き上がるが、感情知能のエラーは直っており、初期化状態での起動となる。これまでの記憶(記録)も全てなくなっている為、淡々としたRPでのみ会話が可能な程度。
エンドには特に影響はない。
人間とは何を以て定義され——……
そして、ヒューマノイドロボットは何を以て区別されるのか。
その議題を提示し続けてきた饒舌な瞳はもうどこにもない。
漸く手にした平穏な日々の証拠だと穏やかに受け取るか、薄暗く心に波紋を起こすのか。
それはあなたたち次第だ。
これからの日々を、どう生きていくのか。
いかに思い悩もうと、既に心が決まっていようと、等しく明日は訪れる。
Eye
またいつかあなたを問い質す瞳が向けられる日がくるかもしれない。
生み出すものとして、それを支えるものとして、あなたたちはその瞳に向き合っていくことになるだろう。
両生還 シナリオクリア
+ 《イオドの退散》を成功させた【1d10】
+ 愛川の最期に立ち会った【1d5】
◇成長 <クトゥルフ神話>【+3】
◇獲得AF 【真珠の欠片】
愛川の瞳に埋め込まれていた真珠の欠片。
微量な魔力が込められており、1度だけSAN値チェックを免除してくれる。
愛川からあなたたちへの罪滅ぼしなのだろうか。
エンド:愛
愛川の修理を断り、伊予戸の奇襲判定が成功した。
その後イオドを退散(撃退)している。
※注意※
《イオドの退散》は成功を前提としている為、イオドとの戦闘によるロストは想定していない。
その後、世間を賑わせていた不審死事件もぱったりと話を聞かなくなった。
日常を脅かすものは無事に取り払われたのだ。
あなたたちに、平穏な日々が戻ってくる。
ずっと取り戻したかったHO2は、いつも隣に居た彼だったのだと、HO1は安堵に包まれるだろう。
ずっとおぼろげだった自身の在り方を思い出したHO2もまた、その心に暖かな安心感が宿るだろう。
探し求めていたものはあなたたちの手へと、戻ってきた。
愛
手にした柔らかな日常をそうと謳っても今は許されるとさえ思えた。
互いが居るその日々に、あなたたちは多幸感の中を揺蕩う。
これからはゆっくりと、しあわせな毎日が過ぎていくだけなのだから。
両生還 シナリオクリア
+ 《イオドの退散》を成功させた【1d10】
◇成長 <クトゥルフ神話>【+3】
◇後遺症 【愛】
穏やかな日常に戻ってきたあなたたちは、互いの居る生活に多幸感を覚えるだろう。
その日々に依存してしまうことは仕方のないことだ。
お互いに対する執着(フェティッシュ)を【1d6】ヶ月の間発症する。
エンド:I
伊予戸の奇襲が失敗し、愛川の修理を断った。
※注意※
シナリオ内で自動解除されるHO1の《石の呪い》以外を解決せずに迎えるエンドとなる為、
HO2の記憶、感情が永久的に戻らない
居住区域外(五芒星の水路の外)へ出る際にイオドとの遭遇判定が発生する
という重篤な後遺症が付属する。
このエンドを回避させたい場合、伊予戸の自宅へ引き返すよう誘導をかけても構わない。
最後に急に呼び出したお詫びとして、伊予戸から真珠の御守りを渡される。
あなたたちは何事もなく伊予戸の自宅を後にすることとなった。
どことなく釈然としない気持ちを抱えながら、日常へと戻っていくだろう。
・
・
・
街では未だに不審死事件が騒がれている。
何となく気にしてニュースを見てみれば、被害者の中に知った名前を見つけるだろう。
伊予戸ムツの名前だ。
あなたたちに依頼をしてきたものの、あっけなく引き下がった彼の態度に心残りを覚えるかもしれない。
あの後愛川がどうなったのか。 伊予戸は何の意図で接触を図って来たのか。
それを知ることは叶わなくなってしまった。
その為、齟齬が発生する場合は適宜調整すること。
また、最終RP地点を設けたいのであれば、エンド描写を都度修正して構わない。
それから何日経てども、HO2の記憶も、感情も、戻ることはない。
人間という自認識はあるようだが、依然肯定できず、意識体験はぽっかりと抜けたままだ。
そんな無機質な彼をどう定義すればいいのだろう。
そもそも、人間とは何を以てして定義されるのだろうか。
HO1にとって、彼は取り戻したはずの大切な相手だ。
けれど、何度も問われた課題が、彼を見るたび頭の中で反響する。
I
私、は何なのだろう。
不安にも似た問いを抱きながら、これからもあなたたちは生きていく。
両生還 シナリオクリア
◇獲得AF 【真珠のストラップ】
博物館で記念品として貰った真珠のストラップ。
1度だけ呪文の成功率を10倍にしてくれる。
◇獲得AF 【真珠の御守り】
何故か壊すことも捨てることもできない。
HO2の元へと戻ってくる不思議な御守り。
その真実は伊予戸からあなたたちに渡された、最期の呪いだ。
◇後遺症 【獲物】
あなたたちの住む街の外には、未だに不穏な気配が漂っている。その正体は魂を狩る者・イオドだ。
今後別シナリオに参加するにあたり、居住区外(五芒星の水路の外)へ出る場合毎回<幸運>ロールが要求される。
成功すればイオドに見つからずに済むが、失敗すると【1d6/3d10】の正気度喪失、および【2d10】のPOW吸引が発生する。
これにより、SAN値あるいはPOWが0になった場合、ロストの扱いとなる為、注意すること。
ただし、AFのストラップを未使用の状態で所持していれば《イオドの退散》に補正を掛けることができる。
上記の遭遇時喪失に加え、【10】の正気度喪失の後、この後遺症はなくなる。
◇後遺症 【I】※HO2のみ
あなたは何者なのか、何と定義できるのか、それはわからないままだ。
HO2はここ1年以前の自分の記憶を永久的に取り戻すことができない。
また、一般的な人間と比べて大幅に感情が欠如している。(今後のセッション等を通じて少しずつ感情を得ていくことは可能)
エンド:藍
戦闘でHPまたはSAN値が0になった、あるいはイオドのPOW吸引を受けPOWが0になった。
※注意※
原則このエンドは想定していない。
ゆっくりと意識が溶けていく。
体の熱が奪われていく。
死の足音が近づいてくることを、あなたは知るだろう。
もう殆ど残り切っていない力で、あなたは傍らの相手の手を。
取る。
自身と同じようにゆっくりと冷えていくそれは、確かに人間のそれだった。
その握りしめられた温度を、あなたは、知っていた。
酷く懐かしい気がした。その郷愁が、あるいは。
手を取り合って共に終われることの、安堵が。
つきりと甘く胸を刺したようだった。
視界は、藍に溶けていく。
両ロスト シナリオクリア
永久ロストとなり、救済シナリオ等に連れていくことはできません。
あとがきと余談と補足
この度は大変難儀な本シナリオをお手に取って頂きありがとうございます。そして近未来SF研究者&アンドロイドバディを期待した方には深くお詫び申し上げます。
蓋を開ければなんと!2人とも人間の!思考実験&デート(?)シナリオでした!トレーラー詐欺も良いところですね。
舞台が架空近未来である必要もHO2がアンドロイドである必要もいっそないのでは?という話なんですが
今回テーマにしたかった『哲学的ゾンビ』の概念に丁度良かったので採用しました。
雰囲気ダケナントナクSFを味わって頂けたら……。
普段殆どシナリオを書かない為、色々と未熟な部分が多いかと思います。
シナリオの大筋を覆さない程度であればお好きなように改変して頂ければ幸いです。
(確定死NPCの生還、過度なHOの変更等はご遠慮ください。)
どうぞこれからも良きTRPGライフを!
余談
ダブルミーニングシナリオタイトルの「アイ」には各エンドへのダブルミーニングとなっています。
下記はエンドタイトルにはならなかったけれどもシナリオ要素に含んだものたちです。
- 哀 アンデルセン童話『最後の真珠』より
- I ①私、語り手 ②9番目(のもの)=完成に程近いと言う意味
- AI 人工知能
NPC・愛川について
愛川は「6」「真珠」がモチーフです。
- 6世代目:6は天地創造の6日目に獣と人間が創造されたので「不完全」を意味する数である。
- アコヤ=アコヤガイ=真珠:6月の誕生石。
アコヤの由来が古語の「吾が子や」から来ていることから、吾が子=HO1の作品(広義)であるロボットを指すミーニング。
伊予戸戦前のHO1,2のRP次第で都度変更して頂いて大丈夫です。
PLPCの回答や態度によって大きく変わると思うので、KP裁量に委ねます。
(友人や仲間として認める等のRPがあればそれを喜ぶ等しても問題ないです。)
簡潔に言うと必要以上に最後までPLPCに敵対的である必要はないです。
ややこしくてすみません………。
シナリオベースの愛川は「けど」「だが」等の否定を「~けれど」
二人称は性別問わず「~くん」という口調の癖があります。
NPC・伊予戸について
ヒューマノイドロボットをあくまで道具と見做し、差別的な態度を取ります。
基本的に愛川に対して「彼」等の人間に対する三人称は使わず、「あれ」等と呼びます。
イオドに関してはどれだけPLPCが否定的な態度を取っても「化け物」「怪物」とは呼びません。
狂信者であるため嘘でも否定が出来ず、曖昧に誤魔化す等の態度を取ります。
本当に完全な余談として彼は機械音痴です。
シナリオイメージソング
アイロニーナ / 煮ル果実
空と虚 / ササノマリイ
困りました・これっていいの?
NPCのRPが長い思いました。ごもっともです。必要に応じて適宜削ったりご調整ください。
CSのチェックが大変
そうなんですよね。それとなく誘導を入れるか、KP側で関係性を固定、HOに年齢の指定等を入れて
調整して頂いても構いません。
HO2が怪我したら血とか出るんじゃないの?
それはそう。
でもHO1は強い幻覚症状と思い込みでHO2がアンドロイドだと妄信しているので気になりません。
HO2の感情は最後の真珠のシーンまで一切出せない?
RPを通して得た感情等(セッション開始後に感じたこと、経験)は反映して構いません。
SNSにエンドタイトルは上げていいの?
大丈夫です。エンドタイトルはネタバレに含みません。
他にも困ったことがあるんだけど!
可能な範囲でご対応いたします。 @FutonCoCまでお問い合わせください。
2021.11.1
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