にんげんは
ごはんをたべると
しあわせ

なるらしい。

概要

システム

クトゥルフ神話TRPG(6版準拠)

PL人数

1人~KPが管理できるまで

形式

KPCとの自宅クローズド

プレイ時間

テキストセッションで1時間~(RP次第でいくらでも伸びる)

推奨

RP

ロスト・後遺症

なし

PC条件

KPCと食事ができる間柄(初対面不可)

30秒でわかる!真相

やあ!みんな大好きミ=ゴだよ!
人間って食事によって幸福感を覚えるらしいって聞いたけど、そこんとこどうなの?
あ、ちょうどいいところにKPCが!
ちょっと協力してよ。

比較的ちゃんとした背景

本シナリオの黒幕はミ=ゴ(基.P191-192)である。
探索者としての因果か、運悪くミ=ゴと遭遇してしまったKPCは、これまた運悪く目撃により一時的狂気・強迫観念を発症する。
遭遇した個体に特に敵意はなかったのだが、とにかくミ=ゴに従わなければ危険にさらされると思い込み、自らミ=ゴに対して協力を申し出てしまった。
ミ=ゴは非常に利己的な種族である為罪悪感を抱くわけもなく、かつ発狂内容の都合が良かったことから
《恐怖の注入》(基.P256)をKPCへ行い、発狂状態を引き延ばした上でKPCを実験に付き合わせることとする。

実験内容は至ってシンプルに「食事と幸福感の因果関係の調査」である。
セロトニンの分泌によるといった医学的根拠はあるが、ミ=ゴは実際に人間の脳波を取った上で自分たちの技術に活用したいと考えたのだ。

そうしてKPCは知人、あるいは友人や恋人等親しい間柄である探索者を呼び集め食事会を開く。
見た目は普通の料理から味が一切しなくても幸福を覚えるのか、逆に醜悪な見た目の料理がとてつもなく美味しかったら?
とりあえず様々なパターンを試してみたいミ=ゴと、一時的とはいえ狂信者のようにミ=ゴに従うKPCによって探索者は奇妙な料理を振舞われることとなる。
料理はきちんとした食材で作られているため安心して食してほしい。

なお、KPCと遭遇したミ=ゴはシナリオ中KPCの家のインテリアに《平凡な見せかけ》(基.P280)によって擬態しており、探索者を観察している。
探索者が触れたりするのであれば違和感に気付けるかもしれないが、基本的に遭遇は想定していない。

ミ=ゴが満足するタイミングはKPが満足するまで。
つまり実質KPがミ=ゴのようなものだ。
好きに食事を摂りながらRPをするだけのシナリオである。
長々記載したが内容はないので好きに楽しんでほしい。

KP処理

KPCはシナリオ開始時点でミ=ゴ目撃による発狂状態にあるため、予めSANを【5】減らしておくこと。

背景準拠にきっちり回すのであれば一定のタイミングでKPCはシークレットで〈SANC 0/1d6〉を行い(《恐怖の注入》によるもの)、
発狂状態が解除されるかどうかのロールをしても構わない。
ただし長引けば長引くほどSANが減るため、これは任意で良い。

探索者がKPCの異常に気付いて聞き出そうとしたとしても、〈精神分析〉に成功しない限りはKPCは口を割ることはない。
〈精神分析〉に成功した場合(あるいは上記の《恐怖の注入》処理で発狂を免れた場合)はKPCの発狂状態は解除される。
KPCの性格によってはインテリアに擬態していたミ=ゴをすぐさま家から追い出す等の行動を取るかもしれない。

また、基本的に探索者がミ=ゴと遭遇することは想定していないが、擬態したインテリアにしつこく構うようであれば姿を現しても構わない。
その場合、目撃による〈SANC 0/1d6〉を行う。(KPCはSANC免除)
戦闘に発展することは尚更想定していない為、遭遇した時点でミ=ゴは即座に逃走する。

本文中の描写はある程度KPC宅の間取りを組み込んでいるため、KPCの雰囲気に合わせて適宜調整してほしい。



本編

導入

「食事会でもしない?」

日が落ち切って街に明かりが灯り始めた夕暮れ時。
さて、今日の夕飯は何にしようかと思案しながら帰路についていた

あなた

の元に、
突拍子もなく、

KPC

からそんなメッセージが届いた。
どうやら最近料理に凝り始めたらしく、作りすぎてしまったらしい。
つまりはまあ、食事会とは建前で有り余る料理を一緒に消費してほしいという申し出だった。
特に断る理由もなかった為、

あなた

は快諾し、

KPC

の自宅へと赴くことになる。

程なくして

彼/彼女

の自宅へ辿り着き、インターホンを押せば扉の向こうからはぱたぱたと足音が聞こえてきた。
それから確認もせずに鍵を開けて出迎えた

KPC

の警戒心のなさに、

あなた

は溜息をつくかもしれないし、小言を挟むかもしれない。
しかし、ふわりと鼻腔を擽った温かな料理の香りに、なんとなく毒気も抜かれてしまう。

促されるまま玄関へ招き入れられ、リビングへと向かえば、
ダイニングカウンターには既にいくつもの料理が皿に載せられているのが見える。
なるほど、これは確かにひとりで消費しきれる量ではなさそうだ。

KPC

はまだ少し準備があると言って再びエプロンを括りつけた。
その間好きにくつろいでいてくれ、そう添えてキッチンへ引っ込んでいく。


🔍探索可能箇所
[ 部屋全体 / 本棚 ]

部屋全体

シンプルな家具で統一された

KPC

らしい部屋だ。
人を招くにあたって掃除もしたのか、綺麗に整頓されている。

〈目星〉

成功:

KPC

の趣味ではなさそうな、少し違和感を覚えるインテリアがある。
部屋の雰囲気にも合わない気がする。

※KP向け情報※
インテリアに擬態したミ=ゴ。
KPCに〈心理学〉を振り成功した場合、嘘をついていることがわかるが、追及したり〈交渉技能〉を振っても口は割らない。

→ 近寄って触れる

触れてみると、なんとなく気味の悪い感覚がする。
思わず手を引っ込めてしまう。

〈SANC 0/1〉


→ KPCに尋ねる

KPC

に尋ねれば「知人に譲ってもらったんだ」と答える。
人から貰ったものを捨てるわけにもいかない為、こうして飾っているそうだ。

本棚

様々なジャンルの本が几帳面に分類されて納められている。

〈図書館〉or〈目星〉

成功:
1冊だけ背表紙が逆さになっている本を見つける。
取り出してみれば、家庭向けの栄養学の本のようだ。
とあるページに付箋が貼られているのが分かる。
開くと『食事と幸せホルモンについて』という見出しがある。

▼ 『食事と幸せホルモンについて』
幸せホルモンと呼ばれるセロトニンとは、ストレスに対する効能がある神経伝達物質です。
自律神経のバランスを整えたり、睡眠の質の向上、健康状態を良くする働きがあります。
セロトニンが多く含まれている食材はナッツ類やバナナ、加工された乳製品、カツオやマグロ等の赤身魚が挙げられます。
ビタミンB6、マグネシウムを含む食品はセロトニン生成に深く関りがあります。

栄養学の観点以外からでも、セロトニンと並ぶ幸せホルモンであるオキシトシンは「何を食べるか」ではなく
「誰とどんなふうに食べるか」が分泌に影響すると言われています。
つまり、より精神的な部分が作用するホルモンということです。
楽しい思い出を想起させる特別な料理を振舞う、親しい友人や恋人と食事を摂る等は効果的と言えるでしょう。

このように食事と幸福感というものは密接しているのです。

食事パート

※KP向け情報※
1食目:味のしないサンドイッチ(実際は寒天)
2食目:見た目が暗黒物質のグラタン
3食目:普通の美味しいハンバーグ
の順となっているが、順番に特に指定はない為、入れ替えて出したり量を増やしても構わない。
KPCにも料理は探索者たちと同様の見た目に見えている為、暗黒物質に関しては動揺するかもしれないが、
比較的平常心で食すことができる。 その為KPCへは食事に際するSANCは発生しない。

1食目

暫くそうして待っていると、準備を終えたらしい

KPC

が料理を運んでくる。
まず差し出されたのは大きな平皿に盛り付けられたサンドイッチだ。
真っ白な柔らかいパンに、色とりどりの具材が見た目にも楽しい。
爽やかな色合いの新鮮なレタスに、真っ赤なトマトのスライス、薄切りされた玉ねぎ。
ペッパービーフがふんだんに使われているようで、折り重なったピンク色がところどころ飛び出てきている。
その他にも定番の卵サンド、たっぷりの生クリームの間に宝石のような果物たちが覗くフルーツサンドと、ラインナップは豊富だ。

※KP向け情報※
香りによる差異を感じさせないために敢えて香りの少ない料理を選んでいるが、何でも構わない。
実際はミ=ゴにより《平凡な見せかけ》をかけられた味のない寒天。

→ 料理を食べる

サンドイッチを口に運ぶ。
ふわ、と柔らかなパンの触感を期待した——のだが。
舌先を滑るのはつるりとした感触、そして、無味無臭。
自分が口にしたはずの料理と全く合致しない感覚に脳が混乱する。

〈SANC 0/1〉

→ KPCに追及する

KPC

は不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの?口に合わなかった?」と言って皿を下げようとするだろう。

※KP向け情報※
KPCに味を尋ねた場合は(寒天だと分かっているので)「普通だね」、あるいは嘘をついて「美味しいね」等と言う。
以下の心理学は宣言があった場合のみロールし、KPから提案する必要はない。
なお、成功した場合でもKPCは口は割らない。

〈心理学〉

成功:
嘘をついているとわかる。
(クリティカルの場合は加えて以下)
さらに、何かがずっと気に掛かっているような様子で、そわそわと落ち着かないようだ。

失敗:
本当に気になっていないようだ。

2食目

なんとなく釈然としないが、

KPC

は構わずまた次の料理を運んでくる。
自然と視線は皿へ向き—— そして、

あなた

はその目を疑うことになる。

まず浮かんだ言葉は 「 これはなんだ? 」 というものだ。
それ以外に言いようもないだろう。
よもやこれを料理などと呼ばないでほしい、心中でそう悲鳴をあげた。

自身の記憶の引き出しを片っ端から開けてみても、一致する料理名が浮かばない。
真っ白な皿の上に踊る黒い謎の物体は、タールのような粘性を帯び、こぽりこぽりと奇妙な音を立てながら泡を噴き出している。
目に痛いコントラストはいっそ禍々しい程だ。
よく見てみれば何やらタコの足らしき触手が蠢いているし、粒だった跡は苦悶する人間の顔にも見える。
煤けた色の煙が立ち上っているのもきっと、気のせいではないのだろう。

しかし、不思議なことに悪臭は一切漂ってこない。
それどころか空腹を促すような、柔らかく美味しそうなホワイトソースの香りが漂っている。

※KP向け情報※
料理は何でも構わない。
実際はミ=ゴにより《平凡な見せかけ》をかけられた美味しいあつあつのグラタン。
KPCを追及する場合は1食目の処理と同じ。
もしKPCの精神状態を疑うPLがいるのであれば任意で〈精神分析〉をロールさせても良い。
成功した場合はKPCの発狂は解ける。(ミ=ゴ逃走処理へ)

→ 料理を食べる

意を決してその暗黒物質を口に運ぶ。
舌先に訪れるのは強烈な刺激か、あるいは受け止めきれずに意識を手放すだろうか。
とても食事を食べる時の心構えではないが、それだけの覚悟が必要だった。

しかし、いざ食べてみればどうだろうか。
想像に反して優しく濃厚な味わいが口の中に広がる。
もっちりとした弾力が歯に当たり、ほっと温かなクリームが流れ込む。
これは、もしかしてグラタン……なのか……?

自分が口にしたはずの料理と全く合致しない感覚に脳が混乱する。

〈SANC 0/1〉

3食目

もはや運ばれてくる料理全てが疑わしい。
今度は何を食べさせられるのかと警戒して次にやってくる皿を見れば、案外普通のハンバーグだ。
ふっくらと丸みを帯びたハンバーグの上で、デミグラスソースが柔らかく湯気を立てている。
添えられたにんじんのグラッセはつやつやと輝き、ブロッコリーの緑も鮮やかだ。
万人が食欲をそそられるであろうその光景、そして空間を満たすジューシーな肉とナツメグの甘くスパイシーな香りは、
自分の記憶するハンバーグともしっかり一致する。

※KP向け情報※
料理は何でも構わない。
あまり奇妙な料理ばかり食べさせるのも可哀想なので見た目通りの美味しい料理を食べさせてあげよう。
以降もランダムで好きな料理を食べてRPしてもいい。

→ 料理を食べる

フォークを割り入れてみると、じゅわりと透明な肉汁があふれ出てきた。
口に含むより先に、舌の奥がすぼまるような感覚を得る。美味しそうだ。
そのまま一切れ食べてみれば、拍子抜けしたり安心するよりも先に、その旨味に幸福感が訪れる。
見た目と香り通り、とても美味しいハンバーグだ。
当たり前のことだと言うのに酷く安心するだろう。

ミ=ゴ逃走
※KP向け情報※
KPCの発狂が途中で解除された、あるいはインテリアに異様に食いつく探索者がいた場合に発生。
描写は探索者がインテリアに食いついた場合を想定しているため、
発狂解除の場合は「いくら尋ねても~忽然と姿を消していた」の部分を下記のように差し替えること。
おもむろに

KPC

が「あ、」と声をあげる。
釣られてその視線の先を辿ってみると、

KPC

の部屋にそぐわない珍妙なインテリアがいつのまにか忽然と姿を消している。

いくら尋ねても

KPC

はこの奇妙なインテリアに関して口を割らない。
もう一度インテリアに触れてみようとすると、ばちん、と手をはじき返される感覚がある。
驚いてそちらを見遣れば、インテリアは忽然と姿を消していた。

代わりにその場に在ったのは、ピンク色の甲殻類に膜のような羽が生えた、奇妙な生物だ。
それは、胴から伸びる節足の先についたハサミを、カチカチと苛立たし気に鳴らしている。
頭部と思しき部分には触手を蠢かせる渦巻き状の楕円体があるのみで、自身の知識の中にどこにも存在しない、当然、動物図鑑等で見た覚えもない。
端的に言ってしまえば、化け物だった。

〈SANC 0/1d6〉



呆然とする

あなた

の意にも介さず、目の前の化け物は一方的に語り掛けてくる。
音の出所を探っても口のような器官はどこにも見当たらず、空間を直接震わせているようにも感じるし、直接脳に語りかけられているようにも思えた。

「このように気を散らしてばかりではまともに脳波も取れやしない」
「今回のやり方は効率的ではないようだ」

特に感情の起伏も読み取れない声色でそう告げると、ふっと、瞬きの後、それは消えてしまった。

※KP向け情報※
戦闘を想定していないので一方的に告げた後(対話は挟まず)ミ=ゴを退避させて欲しい。
そもそも戦闘なんかしたらKPCの家が壊れてしまうしお隣さんから苦情も来るだろう。

エンド

※KP向け情報※
インテリア(ミ=ゴ)にちょっかいを掛けていない前提の描写のため、ミ=ゴを目撃し、退避済であれば適宜調整してほしい。

あれほど山盛り皿に載せられていた料理もひとしきり食べ終えた頃。
最初は奇妙な料理を出されて面食らったものだが、途中からは変な部分もなく、普通に美味しい食事だった。
楽しい時間の方がが長かったからか、最初はむしろ疲労による勘違いがあったのかもしれないと思えたほどだ。
いや、勘違いで片づけられるような異様さではなかったのは確かだが。

そうして食後のお茶を口につけながら満腹になった胃を休めていると、ふと、

KPC

が部屋の隅を見て安堵した表情を見せる。
視線を追うと、

KPC

の部屋にそぐわない珍妙なインテリアがいつのまにか忽然と姿を消していることがわかるだろう。

あなた

が追及しようと口を開くより先に、

KPC

あなた

の方へ向き直って眉を下げて、「今日、最初の方失敗した料理出しちゃってごめんね」と謝ってきた。

※KP向け情報※
ミ=ゴは満足したタイミングでこの場を離れている。
ここでKPCの発狂:強迫観念・ミ=ゴへの追従は解除される。
KPCへ尋ねるのであれば自身の精神状態がおかしかったこと(あの化け物に従わないといけないと強く思い込んでいた)を語るかもしれないし、性格によっては黙秘を貫くかもしれない。

以下、RPが落ち着いたらエンド描写。

何にしても、突発食事会は無事に幕を下ろした。
食事会が無事という表現も些かいびつではあるが、そう評するほかない。

おいしいごはんは、にんげんをしあわせにするらしい。

それには一応、同意できるだろう。
身体を巡るぽかぽかとした満足感と、親しい人と共にした食卓、振舞われた美味しい料理が連れて来た幸福感。
一日の終わりを包む幸せな感覚とともに、軽やかな足取りで

あなた

は帰路を辿ることになる。


エンド

生還報酬 【+1d3】


あとがき

予備日ができたから自陣で飯食おうぜ!何かシナリオ書くか!で出来たシナリオなので中身はありません。
強いて言うならシナリオタイトルは「食卓」と「嘱託(ミ=ゴの実験を手伝っているKPCの状況)」を掛けているというくらいです。
とりあえず自陣やうちよそでだらだらご飯を食べながらちょっと不思議な体験をしつつ、
おしゃべりしようぜという感じなのでなんちゃってCoCでした。

KPCが料理が出来る前提で記載していますが、料理が出来ない場合は冷凍食品でも買っておいてください。
家電すら使えないという超絶不器用KPCだったら大人しくカフェに行こう。
本当のミ=ゴの狂信者が経営している客の全然いないカフェが急に生えることだってあります。
基本なにやっても大丈夫です。

そしてこれはあからさまな宣伝ですが、本編中の料理描写は作者の描写素材『飯テロ描写集』 から引用しています。
こちらも無配なので良ければどうぞ。

ご不明点がございましたら@FutonCoCまで。
改めましてこの度は拙作をお手に取って頂きありがとうございました!
どうぞこれからも良きTRPGライフを!

2022.12.19 洋太

参考URL

医療法人社団 平成医会 『セロトニンの増加が心身に及ぼす効果』 より セロトニンについて
医療法人福寿会 梅田診療所 季節情報誌『うめしん』(H30 ホルモン) より オキシトシンについて

※上記URLは本シナリオを執筆するにあたって参考にしたものであり、各医療法人とは一切関係ございません。
 また、情報の正確性を保証するものではないことをご留意の上、シナリオ中の情報はフィクションとしてお楽しみください。



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